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煙草の話

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静雄さんは、よくキレる。というか、キレやすい。
それは周知の事実であり、キレた静雄さんがその後齎す結果というのは破壊以外にはありえないから、平和島静雄には近づくべからず、もしくはキレた平和島静雄を見かけたら即逃げるべし、なんていうのは池袋では暗黙のルールだった。
いや、暗黙ではないかもしれないけど。

今日も今日とて、静雄さんがキレて投げ飛ばされた自販機の行方を、僕は割と近い場所でぼんやりと眺めていた。
静雄さんがキレる原因の八割は臨也さんで、一割が仕事関係、残り一割がその辺の不良とかムカつく奴らとか。らしい。
今日の原因は臨也さんだった。翻された黒いコートに向かって飛んでいく自販機は目標に当たるでもなくコンクリートの地面に落ち、派手に中身をぶちまけた。

「……わりいな、竜ヶ峰」
「あ、いえ。お気になさらず」

僕との会話を唐突に打ち切って臨也さんに自販機を投げつけていた静雄さんは、臨也さんが消えて怒りが収まった頃僕の元へと戻ってきた。
苛々は、まだ消えないのだろう。紛らわすように煙草を吸おうとしたところで、「あ」と静雄さんが手元の煙草を見て不自然な声を落とした。

「どうしましたか?」
「いや……握りつぶしちまった」

みれば、いつも静雄さんが吸っている煙草の箱が、彼の手の中で見るも無残にぐしゃりとつぶれてしまっていた。キレて、煙草の箱を手にしているのを忘れてしまったのだろう。

静雄さんはこの場所に煙草を買いに来ていて、煙草を買ったと同時に臨也さんが現れて、そしてその煙草の自販機を投げつけてしまったわけだから、もう近くには煙草の自販機が無い。
ためしにつぶれた箱からとりだした煙草は、もはや原形を留めていなかった。

「またやっちまったな」
「前にもやった事あるんですか?」
「ある。ってか、しょっちゅう」

そう忌々しげにつぶやいた静雄さんは仕方なしにつぶれた新品の煙草をゴミ箱に放り投げた。寸分の狂いもなくゴミ箱に落ちたそれを見送ってから、「あのノミ蟲のせいだ」と吐き捨てた静雄さんに、僕は向き直る。

「もしかして、大体は臨也さんが原因なんですか?」
「あ?あー……まあ、そうかもな」

そもそも静雄さんがキレる原因の八割は臨也さんなのだから、それも別段おかしいことではないのかもしれない。

僕は思い付きで言ってみる事にした。

「もしかしたら、臨也さん、静雄さんに禁煙してもらおうと思ってるのかもしれませんよ」
「いやそれはねえだろ」

静雄さんは即答した。
作品名:煙草の話 作家名:ひいらぎ