かっこいい人
でも、顔は普通にかっこいいなあ、とも思う。
聞けば弟さんはあの羽島幽平らしいから、顔が良いのは多分遺伝なんだろう。
普通に背だって高いし体だってたくましいし、きらきらとした金髪も彼にはよっく似合っているし。サングラスとバーテン服も、見慣れてしまえばかっこいい、と思える要素の一つだ。
「静雄さんって、かっこいいですね」
「あ?んだよ突然」
「いえ、そう思ったので」
「あっそ」
コーヒーではなくココアに口をつける静雄さんを見上げながら、僕は買ってもらったお茶をちびちびと飲む。
普通に、かっこいい人だと思う。容姿的な意味でだけど、もしかしたら静雄さんはとてもモテるのではないのだろうか。むしろモテないほうがおかしい気がする。
「静雄さん、学生の頃はモテてたんじゃないですか?」
「また唐突だな」
「あ……すいません」
「いや、いいよ。学生の頃っつても……毎日喧嘩ばっかだったからな。そういうのは縁遠かったよ」
「そうなんですか?なんか、意外です」
「俺はお前がそんな事言いだす方が意外だけどな」
苦笑した静雄さんに、どきりしする。
顔がいいんから、笑うととっても様になる。すぐにひっこめられた笑みだったけれど、僕の目には確かに焼き付いた。
「彼女さんとか……いないんですか」
「お前、今日は質問ばっかだな」
「……すいません」
「いや、いいって。何を期待してんのか知らねえけど、今はいないよ」
そもそも怖がって女なんか寄ってこねえし、ココアに口をつけながら静雄さんはそうぼやいた。
もったいないな、っていうのが正直な感想だ。だって、静雄さん、こんなにかっこいいのに。
「もし僕が女子だったら、絶対好きになってましたよ」
「そっか…………って、は?」
「だから、えっと、その……あまり、落ち込まないでくださいね」
うまい言葉が見つからずそう言うと、静雄さんは目を丸くしながら「……おう、」と答えてココアを飲んだ。
「なんかよくわかんねえけど……あんがとな」
僕も自分で何が言いたいのかよくわからなかったけれど、とりあえず静雄さんに頷いてお茶を飲んだ。
「……なあ、何の話してたっけ」
「……なんでしたっけね」