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処女じゃないと見えない

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処女じゃないと見えない

*

「姿を現さないんだ」
嫌われてしまったのだろうか、と首を傾げるイギリスの言葉を、フランスが上手く汲み取ることができないでいると、「そっか、お前もわかんないんだもんな」と笑って、彼は一人頷き終わらせようとする。フランスが訳を訪ねると、イギリスは困ったように眉を寄せて、「いや、ユニコーンたちがさ」とため息をついた。
「前まではあんなにおれに懐いてくれていたんだが、ここ最近はめっきりだ。話かけてくれないどころか、姿を見せてくれやしない。何かしてしまったのかと思って考えてみたんだが、特にこれといって彼らを不快にさせることなんてしていない。いったいなんだってんだ」
イギリスは口元に運んでいたカップをソーサーの上に置いて、かつて彼らがいた場所に目を向ける。エメラルドの瞳に、それがどう映っているのかを、フランスは知らない。イギリスは何度もため息をついては目を閉じ、頭を抱えては嘆くばかりである。
「いつ頃から消えちまったんだ」
「つい昨日だ」
湯気の立つ紅茶の入ったカップを、フランスは口に運んだ。カップを持つ指先が僅かに震えている。
「それは、急な話だな」
差し入れた舌が、熱さに耐えきれず表面を焦がしたようである。熱かったか、とイギリスが聞くので、フランスは少し驚いただけだと笑って流す。震える声色がイギリスに知られていないか、そればかりを気にしている。
フランスは何も言うことができなかった。つい昨日のことだなんて、まさかそんなと彼は笑う。
「そのうちひょっこり戻ってくるさ」
「そうだといいけどなあ」
フランスは逸る気持ちを静めようと努めるのだけれど、どうしてもイギリスとの昨晩の出来事が頭から離れず、落ち着くことができなかった。


(処女じゃないと見えない/20090323)
作品名:処女じゃないと見えない 作家名:ひだり