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キャプテンだってたまには投げやりになるんです

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「おつかれさま」と風丸は彼の技のように爽やかにコンビニの袋を提げてやってきた。
彼の技のように、と云ったけれど、技というものはそもそも繰り出す人間を現すものだから、やはり風丸一郎太という人間そのものが爽やか成分で出来ているのかもしれない。外の暑さも、そしてそれ以上に熱の籠もる部室の暑ささえもまるで感じないかのように風丸は涼やかに笑った。

「アイス、買ってきたから休憩しないか?」

その後の展開は、語る必要もないだろう。



勉強道具のすっかり追いやられてしまった机を囲んで4人が顔を突き合わせれば自然と話題はサッカーになってしまう。
誰と誰が協力すれば新しい必殺技ができるのか。
攻撃的な必殺技ばかりじゃなく守備的な必殺技をもっと強化すべきじゃないのか。
イナズマブレイクを受けてみたいのだけどどうしたらいいか。
(そもそもイナズマブレイクは円堂を含んだ協力技なのだからそれを円堂が受けるのは無理だろうと指摘すると、自分の代わりに一之瀬がやればいいじゃないかと円堂は口を尖らせた)(一之瀬ならできるかもしれないなあと風丸は円堂に同意したけれど、俺も豪炎寺も黙っていた)

風丸が買ってきた4人分のアイスキャンディーは安さの割にしっかりとした厚みがあったけれど、暑さも相まってあっという間になくなってしまった。
しかし円堂と豪炎寺が勉強を再開する気配はない。俺も風丸も何も云わない。
サッカーの話題ではあるけれど、サッカーをしているわけではない。
ただ、会話が弾む。
声を上げて笑う。
ふと、どうして自分がこの場にいるのだろうな、と思った。
帝国にいて、ただ勝てるサッカーを目指して、そして負けて。また勝つために雷門にやってきた。


(勝つため、に・・・?)

(それだけ、だろうか・・)


向かいに座る豪炎寺と目が合った。彼もどうやら同じようなことを考えていたらしい。口角を上げると豪炎寺も、ふ、と笑った。
それに気付いた円堂が「なに笑ってんだよー!」とふてくされたように身を乗り出す。
「円堂が莫迦ばかりしてるから2人とも呆れたんだろ」円堂トレードマークのバンダナを押して、風丸はため息混じりに笑った。
全く会話を聞いていなかったので円堂と風丸が何を話していたのかは分からなかったけれど、とりあえず「円堂の莫迦さ加減には確かに呆れるな」と調子を合わせる。向かい側で豪炎寺も深く頷いた。

「なんだよ、それー!」
「云われたくなければせめて平均取ってくれよ、キャプテン」
「ぐぐぐ・・」

さすが風丸というべきか、当初の目的を忘れてはいなかったらしい彼はやはり爽やか微笑んで、円堂と豪炎寺に数学のプリントを突き出した。


「ああー!もうまじ学校なくなっちゃえばいいのにー!!」
「そんなことあるわけないだろ。諦めろよ、円堂」








しかしそのしばらく後にそんな身勝手な願いが叶ってしまうとは、この場にいる誰もが想像していなかっただろう。

しかも本当になくなって欲しかった勉強は義務として、残ったまま。