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抱き心地

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「…あいつはアレだな、抱き心地いいよな」
 ぷにぷにしてて。
 そんな事をぽつりと呟く勝利に、
「顔面ファイヤーくらわしますよ兄さん」
 いっそ清々しい程の笑顔でそう言う努力は、最早師への想いを隠す気など無い様だった。

 微妙な空気になりながら、少々の間を挟みつつ。
「…仕方ねーだろ、そーなんだから。お前だって事ある毎にあいつに抱きついてんだから解るだろ」
「…解りますよ。寧ろ私が一番師匠の抱き心地のよさは知っていると思いますが何か」
 常時暑苦しく燃え盛っている筈の炎の瞳が、何故か今この時はこの上無く冷たく感じる勝利。
 こいつ師匠好きすぎだろ、と思いつつも。
「…洋一とラッキーマン、どっちのが抱き心地いいんだろーな」
「試したら顔面ファイヤーですからね」
「めんどくせーなお前!!」
 先程からの笑顔のまま釘を刺す努力に、呆れと共に恐ろしさとそれを上回る面倒臭さを感じた勝利は、思わず心のままに突っ込んだ。





「…大体何で兄さんが師匠の抱き心地を知っているんでしょうね?」
「…いや…こけそうになった時に助けられた形でだな…」
「へぇ………いつの事ですか?」
「………いや………お前も四六時中傍に居る訳じゃないんだからさ…」
「………………」
「うぅぅ…」
 明らかに機嫌の悪い努力に、困りつつ呻く洋一。
 何でこんな事に…とか思いながら、居心地悪そうに身動ぎする。
 努力の腕の中で、である。
 今日はずっとこの状態だ。努力から離す気は無い様なので、洋一の方から言うしかない訳だが…。
「…あの…努力ちゃん…?そろそろ離してほしいなぁ、なんて…」
「お断りします」
「えぇ~…」
 なんという即答。正直案の定ではあるが。というか、仮にも師匠にお前…なんて思いながら声を上げる洋一。
「…私に抱かれるのは嫌ですか」
 問いの形にしながらも、逃がさないとでも言う様に、洋一を抱く腕に力をこめる。
 その動きと強められた力に、ん、と声を漏らし、次いで溜息。
「…んーな事言ってないだろー…。大体、嫌だったら逃げてるよ。…まぁ、逃げられないだろーけど、暴れてる」
 自身のついてなさと努力の力の強さの為に、逃げられないと解っているけれど。それでも嫌なら無駄でも暴れる。
 全てを諦めて享受する程自分は大人でも悟ってもいないのだ、と。
「…師匠…」
「だから力強めんなって…」
 噛み締める様にその言葉に感激して、より一層強く洋一を抱き締める。
 洋一は苦しそうに、しかし確実にそれを受け入れていて。
「ったくもう…」
 強まる腕の力に、呆れと諦めを伴った溜息。
 けれどそれ以上は言わず、身を預けてくる洋一に。
 欲が刺激されてしまうのは、努力にとっては当然の事で。
「…抱いていいですか」
 囁きが、洋一の耳に届く。
「…い、今してんだろ」
「…違う意味で、です」
 途端に赤く染まる耳に口付けて、欲に掠れる声で囁いた。
「…う…うぅ…」
 その言葉にか感触にか。耐える様に、きつく目を閉じて唸る洋一を待つ。
 困った様に眉尻を下げ、恥じらいに震え、意味の無い声を漏らして。
「…師匠」
 促す様に耳朶を甘く噛んで舌先でなぞり上げれば、高く甘い声を上げて大きく震えた。
「っ…ん、う…。くそぅ………このエロジジイ…」
 酷い言い様だなぁ、と内心苦笑し、赤い顔に涙目の師の様子に可愛いなぁ、と思いながら。
「貴方の可愛らしさが私を狂わせるんですよ」
 本気の本心を言い切ってやった。
「…はずい事言ってんじゃねぇよもー…」
 この天然タラシが…などとぶつぶつ言いながら。
「…ったく…好きにすりゃいーだろ、ばか」
 赤い顔のまま諦めた様に、努力の胸に自ら倒れ込む。
 そして努力は、
「はい、好きにします」
 語尾にハートマークでも付きそうなくらい嬉しそうに、甘く蕩ける様な笑みを浮かべながら、師の言葉通りにするのだった。





 後日。
 好奇心からか、努力をからかう為か、それとも別の理由からか。
 勝利マンがラッキーマンを抱き締めようとして、宣言通り努力から顔面ファイヤーをくらったのは…まぁ、別の話である。
作品名:抱き心地 作家名:柳野 雫