羽毛みたいな
「はい」
「その・・・・抱きしめてみても、いいか」
「は、はい・・・・」
若干緊張しながらそう言った静雄さんに、僕も緊張しながら頷いた。静雄さんが僕の方に小さく一歩を踏み出して、そして右腕を伸ばしてきた。肩に添えられた掌に、震えそうになる体をどうにかして押し留める。肩を引き寄せられゆっくりと傾いた僕の体は、静雄さんの胸に受け止められた。
「・・・・」
「・・・・くるしく、ないか」
「へ、へいきです、」
背中と肩に回された腕は、静雄さんなりに大分気遣っているのだろう、大した力はこめられていなかった。苦しくはなかったけれど、僕は別の意味で苦しくて、ついでにいうと熱くて恥ずかしくてたまらなくて、緊張でどうにかなってしまいそうだった。
ぎゅ、と、震えを誤魔化す様に静雄さんのベストを握り締める。早鐘を打つ心臓の鼓動がぴたりと胸を合わせた静雄さんにも伝わってしまうんじゃないかって、そればかりを考えた。真っ赤になっている顔を見られたくなくて、そっと顔を静雄さんの体に押し付ける。煙草の匂いと、あとはよくわからない、でも大人っぽい匂いがして、それにまたどきどきした。
静雄さんが触れている部分が、あつい。
「りゅうがみね、」
「は、はい」
「もうちっと・・・・力入れても、いいか」
「あ、はい、どうぞ・・・・」
緊張のあまり上手く回らない舌で何とか返事をすると、少しだけ、本当に少しだけ、肩と背中に添えられた静雄さんの手の力が、強くなる。途端静雄さんの体温とか匂いとかが濃厚になった気がして、僕は自分の足が震えているのに気がついた。多分、今体を解放されたらへたりと座り込んでしまうだろう。
「おまえ、」
「は、い」
「だきこごち、いいな」
ちっさくて、なんか気持ちいい。
そう呟いた静雄さんが本当に優しく、優しく僕の頭を撫でて、僕は泣きそうになってしまった。