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Twinkle Little Star

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僕は空を飛んでそれからきっと星になるんだと、光は広すぎる夜空へと手を伸ばして言った。こいつのロマンチシズムはちょっと飛んでいるように思う。そうかそうかそれはよかったと僕は至極適当に返事をしてみるけれど、きっと光にはその言葉すら届いていないのだ。――すべて同じなのに、まったく違うのは何故だ?
最初から最後までおなじ輪郭を辿っていたいと、そう思うことすら罪のように。

デザイナーの母を持ったところで自分たちがそれを受け継ぐかはひどく微妙で、「僕はもしかしたらまったく違う道へ進んでいるかもしれない」と、唐突に言うのはいつも光だ。僕の肌はその異常性をいち早く察し、いつものように「そっか」と軽くいなしてそれ以上はなにも言うなとささやかな警告を張った。しかし光は気付かない。こんな簡単なことにも気付かない。
ハルヒの存在が、確実に、光を、僕を変えようとしていた。

閉鎖的な僕たちの中に舞い込んだ一つの風は予想以上に強く、おおきく、吹きあれて、その力をいかんなく発揮する。やめてほしい乱さないでほしいと願ったところで、嵐の根源、張本人は至って無自覚なんだからまた手に負えない。こわい。僕の、この、恐怖。底なしに近いもの。

光は終わりを求めている。
僕は終わりを恐れている。

ああどうしよう、頭を抱えて嘆きたい気分に駆られた。ハルヒのことは大好きだけど、永遠にすきなもののひとつとしてしか数えられないほどに大好きだけれど、光はもう、いなくてはならない存在なのだ。同じ人間なのだ。同じ魂をもつ、とてもわかりやすい半身なのだ。夢みたいで馬鹿みたいで子供っぽい寓話だということも、わかってる。でもその確信は揺るがなかった。僕は僕を形成するものを信じるし、信じたい。
僕から光を奪ったら何も残らない。明確に、爪の先ひとつとして、消し飛んでしまうに違いない!

ぞっとするほど純粋な視線は、結局何もかもを暴こうとしている証拠で、純粋の奥に不純な下心が隠されているとを知っていながら、僕は平気で腕を伸ばす。伸ばした腕は乱暴に振り払われて、傷ついた部分をそっと優しく撫でられるのだ。そして僕も同じように繰り返す。暴こうとする、見せずにいる、乱暴に振り払って、頬をなぜる。
優しさは痛いものだ。僕の前からいなくなるぐらいなら、いっそ殺してしまいたい。病的だと言われたって構わなかった。

光が空を飛ぶその前に、光が星になるその前に、僕がお前を殺すのではなく、お前が僕を殺すのもいいかもしれない。
モノクロの画面がいつか色彩を加えられるとき、僕たちはどちらも潔く死んでしまう、そういうことで、いいのかもしれない。

光、僕の前から消えるなんて、そんな残酷なことがあっていいと思うの?

ねえお前、優しさなんていらないと、何度言ったらわかってくれる。
作品名:Twinkle Little Star 作家名:knm/lily