【落乱/忍たま】次屋×浦風 現パロ
現パロ つぎうら
夏休みも終わりにさしかかった浦風藤内宅。次屋三之助と浦風藤内は、主に三之助が積み上げた課題を片付けるために午前中から勉強にとりかかっていた。
藤内の部屋にはエアコンがない。扇風機があるものの、今年のひどい暑さの中ではただ熱風をいたずらにかきまわすだけの使えない道具になり下がっていた。
藤内はそれほどでもないが、三之助は極度の暑がりで、ひとたび外出するとエアコンを求めてショッピングセンターやスーパー、ゲーセンをはしごするばかり。
三之助の課題にはほとんど手はついておらず、夏休みの友代わりの生活ノートも7月21日から後は真っ白のままだった。
三之助に任せておくと、また最終日まで溜めて電話で泣きついてくるのは目に見えている藤内は、それを阻止する目的も兼ねて、盆が終わったらすぐに家に来いと電話をかけていた。
約束通り、今日、8月16日からすぐに藤内宅で宿題の大掃除に取り掛かることになったのはよかったのだが……。
「あぢー……。藤内、麦茶」
「また? これで何杯目だと思ってるんだよ」
「こう暑くちゃやってらんねーよ……。図書館行ってやろうぜー」
「図書館は本を読みに来る人が利用するところだから、自習目的で行くのはよくないって中在家先輩が言ってたから駄目」
三之助はシャープペンを投げだしてフローリングに寝転がった。
藤内が、三之助の空になったグラスに冷たい麦茶を注いでやると、起き上がって一気に飲み干す。
「ぷあーっ、やっぱり夏は冷たい麦茶に限るなー」
「わかったらさっさと課題」
「えー」
「えーじゃない、やらなくて泣きを見るのは三之助だぞ」
「そんなこといってるけどな、藤内はどうなんだよ。終わってるのか?」
「俺は、勿論」
そう言って藤内は、既に全てを解き終えた自分のワーク達を広げて見せる。
予習や自主トレが好きで真面目な性格の彼は、休みが始まるより前に少しずつ課題をこなしておいて、休みが始まったら毎日決まった量だけをやることを心がけていた。
気がつけば夏休みのワークは、7月が終わるころにはほとんど片付いていたのだ。
勿論花火大会や海水浴など、夏を満喫するイベントにはいつも参加した。
中学3年生の仲良し6人組で集合できるのは、この夏がもしかしたら最後かもしれない。
今年は受験が控えているし、皆それぞれ違う方向へ歩き始めるかもしれないのだから。
「流石藤内。んー」
三之助は両手を藤内の前に差し出す。
「何この手……?」
「写させてー」
「ばっかやろう、誰が写させるか。少しくらい自分の力で問題解けよ……。わからないところは教えてやるから」
「お! ほんとか? 流石持つべきものは出来る恋人―!」
「こ、こいっ……なんだって……?」
「聞き返さなくても、俺は思ったことをそのまま言ったつもりだけど?」
「おま……そんなもんまで迷子になったのか……?」
はー……、と藤内は呆れかえった。こんなにも軽く同性に告白するような奴だとは思っていなかった。
「ばっか、藤内に対する思いだけは、どれだけ方向音痴だろうと、迷子になんてならねえよ」
三之助は、前髪をあげて藤内の額に軽く口づけた。
「ちょ、お、え、あ!?」
「うばっちゃったー。ほんとは口がよかったんだけど、それはまた今度、お前の気持ちをちゃんときいてからなー。さ、宿題宿題」
三之助は何事もなかったかのように課題にとりかかった。
課題よりも、何よりも、一番解けない難問は、人間の気持ちだったりするのかもしれない。
藤内はしばらく三之助の一連の行動を思い返して顔を真っ赤にしたまま俯いていた。
おわり
作品名:【落乱/忍たま】次屋×浦風 現パロ 作家名:えらこ@ついった