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仏蘭西の店窓から

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カフェでコーヒー飲んでたら雨が降り出した。

雨に濡れる街並みも美しいね、さすがお兄さんのお家。 
うっとり窓越しの風景を眺めてたら、向かいの店の軒先に慌てて逃げ込む人影ひとつ。 

イタリアじゃん、あーあー相変わらずおバカだねぇ。傘持たずに出て来たんだな。空見りゃ今日は降るなって解りそうなもんなのに。 

一瞬こっちに呼んでやろうかなって思ったけど、やめた。 
どうせそのうちアイツが来るに決まってるもんね。下手に手を出して痛い思いするなんてお兄さんイヤだからね。 

オロオロと行き交う人波を見てるイタリアを眺めること5分、ほーらやっぱりね。向こうから傘さした厳ついのが歩いてきた。

なんなの?アイツにはイタリア発の電波を受信する機能でも付いてるの? 
あーあー、おバカちゃんが両手挙げて嬉しそうに呼び止めてるよ、見てるこっちが恥ずかしくなるよ、もう。

説教喰らわすゴツイのとシュンとしてるイタリアを眺めること10分、アイツも懲りないねぇイタリアに言い聞かせても無駄だって。おバカちゃんなんだから。
ほらベソかきだしちゃったじゃん。ベソかくの見てうろたえる位なら最初から説教なんかしなきゃいいのに。どーせ最終的には…ほらね、傘に入れてやることになるんだからさ。 

腕にしがみついてるのも離せって言うだけじゃ無理だって。力づくでひっぱがさないと離れないって。でもそれはしないんだろ?
苦虫噛んだような顔してるけど、まんざらでもないんだよな、あのゴツゴツ。 

ベッタリくっついちゃってあーあーもー 
涼しかったのに暑苦しくなってきたよまったく。

…帰ろっと。なんか哀しくなってきた。帰ってあのこに電話してデートでもしよっと
「Merci, Au revoire」

そう言ってフランスは少し淋しげな背中でカフェを後にした。

作品名:仏蘭西の店窓から 作家名:スープ