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この先のないもの

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昼間の汗を流したマリーはバスローブ・・・ではなく、また違う服を着る。
だぼついたオレンジ色のセーターに、ホットパンツ、大きな帽子を被った彼女は殆ど変装・・・いや、そのものだ。
彼女は時刻が12時を過ぎるまで部屋で過ごし、それから廊下に人影が無いことを確かめて部屋を出た。
彼女は曲がり角に当たるたびにその先に人影がないことを確かめ慎重に進む。
そしてエレベータへと乗り込むと、フロントでもなく、ショッピングフロアでもなく、エステフロアでもなく、そしてまたレストランフロアでもなく、数階上の宿泊フロアへと向った。
彼女は降りたフロアでもルームナンバーを見ながら慎重に進み、そしてひとつの扉の前で脚を止めた。
彼女はルームナンバーを複雑な顔でしばし見つめ、それからもう一度左右を確認して人影がないことを確かめると、軽く右手に拳を握り・・・

「遅かったな」

ノックの前にそれは内側に開き、男の声と共に伸びてきた手に腕を取られ、
「ちょっ・・・・」
抗議の声を上げる間もなく部屋に引き込まれる。
抱き込まれた厚い男の胸。
シャワーでも浴びていたのだろうか、マリーの頬に水滴がいくつか落ちた。
「遅い」
「・・・本当は来るつもりなかったのよ」
「じゃぁなんで来た?」
くつくつと喉の奥で笑われて気分が悪い。
だが、男を突き飛ばして帰ろうとは思わなかった。
「煙草臭いわ」
禁煙マークをトレードマークにしているくせに。
そう避難すると男はまた笑い、彼女の肩に手を回して歩き出す。
部屋の中はベッドサイドランプが一つだけ灯っただけ。テーブルの上にはジャックダニエルと、灰皿。奥のカーテンは開け放たれており、夜景が一望出来る。
眺めは・・・位置の関係か、マリーの部屋よりも随分よかった。
男が紳士ぶって彼女をエスコートしたのは、ジャックダニエルののったテーブルの方ではなく・・・この部屋にただ一つあったダブルのベッド。
「ちょっと!」
「なんだよ」
「即物的過ぎるわよ!」
胸を押し返そうとするが、彼の力は強い。
いや、彼女が本気を出せば、互角に持ち込めるくらいの自信は彼女にはあった。
だが・・それをしないのは・・・
「そういうつもりできたんだろ?」
「・・・・ッ!」
耳元に息を吹き付けられ、ブルリと体が震える。
「ビリー・・・」
「ん?」
ニヤニヤと意地の悪い笑み。
それは闘技場で見ればこの上なく憎らしいもの。
しかし、この場においては鼓動を高める要素しか持たない。
「やなやつ」
そう悪態をつきながらも、彼女は素直に体を後ろに倒す。
「即物的なのはお前もいっしょじゃねぇか」
彼女は男の言葉にムッとしながらも「そうね」と同意する。
なぜなら全くもってその通りだからだ。
彼女と彼の間には即物的なものしか存在しない。

情、恋、愛

そんなものは存在しない。

あるのは、

体、欲求、快楽

“虚しい。けど、私らしいわね”

彼女が自嘲すると、
「集中しろよ」
男が苛立ったように言った。
彼女は謝罪替わりに妖艶に微笑むと、男の首に腕を絡めた。
作品名:この先のないもの 作家名:あみれもん