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ワグナリア怪奇談

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ワグナリアのマスコット、種島ぽぷらがある日真っ青な顔をして休憩室に現れた。
「どうしたんですか?先輩」
「かたなし君…」
 雨の中で打ち震える仔犬のような顔で、自分を見上げるぽぷらに小鳥遊は内心でキュンと萌えあがる。
(やっぱり先輩は可愛いなぁ~)
「何があったんですか?」
「…さっき、怖い話を聞いたの」
「…佐藤さんですか」
「ううん、相馬さん」
 どっちにしろ厄介な。
「相馬さんの話は、そんなに真剣に聞かない方が…」
「ひどいな~小鳥遊君」
「うわぁ!」
 突然耳元から聞こえてきた低い声に、小鳥遊は飛び上がって机に激突した。後ろに立っていたのはいつものようにニコニコと胡散臭い笑顔を絶やさない、厨房担当者だった。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「そんな図太い神経を俺に期待しないでください!」
「いやぁ~、でも今の小鳥遊君の叫び声で、ほら、種島さんが…」
「え?」
 相馬の指さす先を見れば、机の陰でぽぷらが頭を抱えてしゃがみ込みながら震えていた。その姿はさながらおびえながら隠れる小動物そのままの愛らしさにまたキュンとしてみたが、そのままにしても置けずに大丈夫ですよと慌てて声をかける。
「俺がちょっと驚いただけですから」
「いや~、ごめんね種島さん。まさか小鳥遊君があんなに大きな声をだして驚くとは思わなかったからさ~」
「って俺が原因みたいに言わないでください!」
「え~、そんなこと言ってないよ?」
 十分言ってるよ。心中で突っ込みながらもそんな皮肉を聞くような相手でもないので飲み込んだ。
「怖い話って、どんな話をしたんですか?」
「あれ?小鳥遊君も聞きたいの?え~、珍しい。『そんな非科学的な事』とかって一刀両断するかと思ったのに」
「じゃぁ、聞き方を変えます。どんな話をして先輩をおびえさせたんですか?こんな風に!!」
「人を責めるような言い方して、実はちょっと嬉しそうな顔をするよね、君も」
 そんなことはありません、と言いつつも、おびえる種島を見れたのはちょっと嬉しかったのも本当の事だ。『グッジョブ』と思ったことも、一応秘密にしておこう。
「ん~、たいした事は話してないんだけどなぁ。なんだか最近、店の中で誰もいないはずのところで黒い影が動くのが目撃されたり、休憩室で休んでいたら人気がないのに足音が聞こえてきたり、しめたはずのドアがあけっぱなしとかその逆とかがよく起きるようになったことくらいで」
「ウソ!相馬さん、声もするって言ったよ!」
「そうだっけ?でも、とっておきに怖い事はまず言ってないし」
「とっておき!?」
 びくびくと震えつつも、実はちょっと期待が含まれたまなざしをぽぷらに向けられて、相馬は知りたい?と微笑んだ。
「~~~~!」
(また、そんな言い方して)
 ぽぷらのなかで好奇心と恐怖心がせめぎ合っているのが見えるようだった。そしてどちらが勝つのかは目に見えている。
「……」
 教えてください、とぽぷらが小さく呟いた。
「本当に良いの?」
 思わせぶりな相馬の台詞に、ぽぷらは静かに小鳥遊の後ろに隠れつつもじーっと相馬を見上げる。ぎゅっと、小さな手が小鳥遊の服の袖を握るが、聞く気は満々だ。
「これはね、キッチンのほうで噂になってる事なんだけどね」
 それはちょうど佐藤と相馬が休みで残りの厨房担当がラストまでいた日の事だと言う。
 別に新人が集まっているわけでもなく、忙しい時間もどうにかこなし、ラストを迎えると彼らはやれやれと休憩室へ戻って帰り支度をした。さて、帰ろうか、となった時。
「天井から、何か物音がしたんだって」
 低い、相馬の声が意味深に耳に響く。
「聞き間違いかと思ったら、コトン、コトン、ってその音が近づいてくるんだ。ネズミとかじゃないよ。もっと重い音。そう、人間の足音みたいな」
 ぽぷらが、ごくりと唾を飲み込む。
「念のために休憩室とかも確認したんだけど人影はゼロ。その間も足音は続いていて、ふ、とそれが止まったんだ」
 休憩室の出入口で外を見ていた厨房担当者は息をのみ込んだ。
「背後に、それまでなかった人の気配。勇気を振り絞って振り返ってみるとそこには」

 天井からぶら下がる長い髪の生首が

「「ぎゃー!!」」

 悲鳴が二つ重なった。
 それを聞いたぽぷらが天井を見上げて
「ぎゃー!!」
 そこにあったのは、人の頭だった。長い黒髪が逆さに立ち、ものすごい形相で彼らを睨んでいる。


「落ち着いてください、先輩。山田です!」
「相馬さん!怖すぎます。山田が夜寝れなくなったらどうしてくれるんですか!?」
 生首と思われたのは半泣きの山田の頭だった。よくよく見れば天井に穴があいて彼女はそこから頭だけを出しているのだ。
 小鳥遊はぽぷらをなだめるも彼女は半泣き状態で小鳥遊に抱きついていて話を聞いていない。相馬は腹を抱えて爆笑している。
「まぁ、全部山田さんのことだって、ちょっと考えればわかるよねぇ」
「…あ、葵、ちゃん?」
「ひどいです!山田は幽霊じゃありませんよ!!」
「そう思うなら、その体勢をやめろ!」


おまけ

「ちなみに、ワグナリア七不思議ってのがあってね」
「また、胡散臭いものを」
「1、直しても直してもひびの入る壁」
「それって、伊波さんが壊してるだけでしょう?」
「2、壁の低いところについている小さな手形」
「あぁ……。先輩が破損報告を書くのにペンを持ったまま飛び跳ねるから、手にインクがうつって手形が残るんですよね(ちょっとトキメキ)」
「3、いくら補充しても足りない生クリーム」
「……それって不思議なんですか?」
「4、気がつくと冷蔵庫に増えてる納豆」
「それも…」
「5、いくらでも入る店長の胃袋」
「確かに…不思議ですね」
「6、店内に響く鍔鳴り」
「鍔鳴りって、そんなにいつも抜刀してるんですか!?」
「7、いつまでも片思いの佐藤君」
「…言わないでおいてあげましょうよ…」
作品名:ワグナリア怪奇談 作家名:sulme