三度までの初めまして
擦れ違いざまに目にしたとても純朴そうな外見とは異なるかもしれない、若しかする何処にでもあるちょっとした意外性を感じる。
最初に無視したのは臨也さんでした。
覚えがないので無実、とはいかないらしい。寄せた好意は還元されないと、それは短絡的に刺を持ち得る。
曖昧なままでいる方が、互いにとっても淀みを見続けずに都合がいいのだろう。執念深い己と大切なものは抱え込む傾向のあるこにすれば恐らく、セピア色になるにはまだ早い過ぎ去っていくとある日を、記憶の引き出しへと大事に仕舞わさせて頂くことになる。いつかは浅くも決して埋まらない溝になるのだろうが妥協する。
両者引き分けとして、取り敢えず第三者の乱入もなく薄味の区切りが付いたのがこれ幸い。
奮起してクラス委員長になり、早速教師に運搬をすまなそうに頼まれた。腕に溢れそうな量の用紙にふらりよろめき、さっきの眉を八の字にした謝罪に納得しながらも廊下を頼りない視界に左右される足で渡る。
そうして充分でない視界、非力で体力のない自分と揃った材料から半ば予期していたといっても。
ほう、と溜めた息を空気に混ぜる。窓越しの澄んだ真っ青な海のような空と、宙を優雅に泳ぐ白い用紙のコントラストに一瞬見惚れる。
拾い集めている最中、偶々通り過がりのひとが労りながら回収を手伝い、加えて目的地まで雑談を交わしつつ運んでくれた。
あの先生が担任なんだ?あいつ初日に大量にこうやって運ばせるから毎度誰かが生け贄になるんだよねえ、君ついてないねえ。
美人さんは後ろ姿も華やかであった。
擦れ違いさまの会釈をスルーしても変わらずに、そのひとは大層美しかった。
作品名:三度までの初めまして 作家名:じゃく