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結局彼は

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追手内洋一。
彼はドライかクールか鈍感か。
それが垣間見れる日常を一つ。


…何がしたいの、この人。

放課後。
屋上に有無を言わさず連れてこられて、座る勝利に抱き込まれて暫く。
一向に離す気配の無い勝利の腕の中で、自分のついてなさを噛み締めつつ、現在進行形で困っている訳だけど。

「…あのさぁ、勝利」
「ん?」
「…何がしたい訳?」
仕方無いからそのまんま訊いてみた。
「ああ、努力がお前の事よく抱いてんだろ。そんなにいいのかと思ってな」
「…言い方がおかしいよ」
それにあれは感激して抱き潰さんばかりに締め付けてくるだけなのに、いいとかそーゆーの解るのかよ…ってちょっと待て。
「…いいって何が」
「そりゃ抱き心地とか」
「僕は抱き枕か何かか!!」
「うるせーなー。耳元で騒ぐんじゃねーよ」
全く堪えてないなこいつは…。
「じゃあ離してよ」
「いーじゃねーか、もう少しこーしてろよ」
「何でだよ…」
溜息が出る。
なんかもう、この兄弟はよく解らない。
勝利なんて女子に人気あんだから、そっちいけよそっちに。
僕なんか抱いてるよりよっぽどいいだろーに。
…もしかしてこれはアレか、実は勝利ブラコンっぽいトコあるから、意趣返しとかだったりするのか。…もう十分解ったから、離してほしいなぁ…。
努力みたいに力任せに抱き締めたりしてる訳じゃないから、別にいーけどさ。他に人いないし。
だからって男に抱かれてもなぁ…。
大体勝利は胸板厚くて硬いから、こっちにしてみれば抱かれ心地なんてよくないし。
努力は…うん、暑苦しくて痛い。それこそ抱かれ心地とか以前の問題だよねー。
と、もう耳に慣れた鉄下駄の音。まあ実際は豆腐なんだけど。
ずどどどど、と、なんかすっごい音が近付いてくる。ああ、こりゃ勢いすげーわ。地面抉れてんじゃないだろーか。
そんな事を呑気に思っていると、屋上のドアが壊れる程勢いよく開かれた。
…いや、ほんと壊れてないだろーなアレ。
「師匠っ…!!ちょ、兄さん何してるんですかっ!!」
僕達を見付け、一瞬目を見開いた後に険しくなる顔。
うはー、怒ってる怒ってる。
そーいや努力もブラコンっぽいよなぁ。
まぁ、仲違いしてた時期も長かったし、兄弟仲が修復されたのはいい事だと思うけど。
その反動なんだろーか。…って、それ僕の身が危なくねぇ?悪意とかは無いけど、努力加減知らないから酷い事になりそうだよなぁ…。
…慣れてるから別にいいけど。
これで解放されそうだし、とか思ってると、努力が叫んだ。
「師匠を離して下さいっ!!師匠は私のですっ!!」
………いやいやいや。何だ今の台詞は。お前兄より師匠とるのか。てゆーか私のって何だ私のって。
突っ込みが追いつかない。加えて声も出ない。呆れのせいでか驚きのせいでかは知らんが。
そんな僕に構わず、事態は進行していく。
「いいじゃねーか。たまには貸せよ。洋一だって、お前ばっかじゃ飽きるだろ」
「なっ、何言ってるんですか!!そういう問題じゃないでしょう!!…私に飽きたりしてませんよね!!師匠!!」
ええい僕に振るな。大体そういう問題じゃないんじゃねーのかオイ。
そして勝利も腕の力を強めるな。いてぇ。
それを見咎めたのか、また険しくなる顔。
「…離して下さい」
あぁ、努力の声が低い。やばい。怒ってる。
「…だが断る」
ネタのつもりかこの野郎。
加えて挑発する様なニヤリと擬音が付きそうな笑みを浮かべるのはやめろ。
なんか二人して凄い顔で睨み合ってる。
…なんだこれ。
訳わかんねー事で修羅場を構築するんじゃねえ。
しかしどーすんだこれ。どうにもこうにも終わりそうにない。
と、
「はいはい、そこまでー」
横手からそんな空気を壊す声。
いつの間にやら友情が来ていた。


…結局その状態は、二人を迎えに来た友情によってやっと終わった訳なんだけど。
「次は僕も洋一君の事抱いていいよね?」
だって友達じゃないか!!なんて、反論一つ出来なくなる様な笑顔で言われた訳で。
それを聞いた努力と勝利の顔が…なんかもう、凄い事になってた。
何が気に入らないのやら。
もうめんどいんで、友ちゃんにぎゅむっ、と抱きついて、そのまま暫く。もういいかな、と思って身体を離したら、努力と勝利だけじゃなく、友ちゃんまでなんか固まってた。
…自分で言ってた癖になんなのその反応。
後ろの一匹狼マンも汗垂らしながら固まってたし。
動く気配無いんで放って帰ろうとしたら、天才と目立が寄って来て、それを目撃したのか努力達も慌てて寄って来て、結局その日は皆で帰った。


そして後日、何故か再びそんな事態が発生し。
天才や一匹ちゃんや目立までもがそれに加わる訳なんだけど。

…あぁ、うん、なんかもう、流石だよね。
宇宙一は伊達じゃない。
そして、誰かの腕の中。
今日もお決まりの台詞を叫ぶ僕がいた。
「………本っ当、ついてねぇーーーっ!!!」



追手内洋一。
結論としては。
彼はドライでクールで鈍感で。
そしてやっぱりついてなかった。
…それに加え。





「………ある意味鬼ですよね、ししょー………」
「鈍すぎねえか流石に…」
「巻き込まれ型ではあるけどマイペースだしねー」
「フッ………罪な男だ」
「無自覚天然小悪魔受けか…なかなか目立つフレーズだな」
「お前それしかないのかガル…」
彼は周りに振り回されていると思っている様だが。
実際に振り回されているのは、その周りだという事に。
多分これから先も暫く気付かないであろう彼は、結局何より手強いのだった。
作品名:結局彼は 作家名:柳野 雫