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紺碧の空 番外編【完結】

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 君はいつだって俺の傍に居てくれたんだ。自分で気付かなかっただけで、離れていると思っていた時間でも彼はずっと其処に居た。
 アルフレッドは痛む腕を持ち上げて、硝子越しに阻まれた空に向かい指を伸ばした。
 会いたいよ。
 会いたいよ、アーサー……。
 自分はまだこんなにも彼の事が好きで、彼の幸せを願って身を引くべきだと解かっているのに会いたくて。触れたくて。感じたくて。声が聴きたくて、我慢出来ない。自分はまだこんなにも彼が好きで、愛しくて、必要としていた。今だってアーサーがきっと助けに来てくれると信じているから、遭難の恐怖に覚える事無く、こうして大人しく待っている事が出来るのだ。
 もし……もしも一番に助けに来てくれたのが彼だったら、その時はちゃんとお礼を言おうか。今まで傍に居てくれてありがとう。今も傍に来てくれてありがとう。俺は君を愛しているのは本当だったんだ。愛しているから捨てる。優しい場所も。君の声も。言葉も。
(ごめんよ……)
 ごめん。ごめんなさい。
 唐突に沸き起こった衝動に、アルフレッドは何度も謝罪の言葉を浮かべて兄に謝った。
 もし自分の存在が邪魔になるのなら、障害になるのなら、今はもしかしたら奇跡的に与えられた好機なのではないだろうか。頭の片隅に浮かんだ思考に、アルフレッドはすっかり夢中になっていた。
 彼の前からひっそりと居なくなる為の、とっておきの機会。
 今回の事故は予測が出来ないものだったのだし、自分は言わば巻き込まれた側の被害者だった。今此処で果てたとしても、誰も疑う事無く事故だったのだろうと哀しんでくれるだろう。
 このまま自分が居なくなれば、もうアーサーの家庭や将来の負担になる事も無いだろうし、同時に、きっと彼の胸の内に深い傷となって自分の存在を残すことが出来るだろうと思えた。それはとても卑怯な考えで、愛する人を慮る気持ちがあるならば決してやってはいけないことだったけれど、もう背に腹は変えられない。彼が死ぬまで自分を忘れないでいてくれたら、それはどんなに形であっても幸福には違い無いのだ。
 だったらもう、意地になって意識を保っていないで、眠ってしまえばいいじゃないか。そうすればすぐに楽になれる。脳内に響いた誘惑の声音に、アルフレッドはしっかりと肯いて緊張していた全身から力を抜いた。
 睡魔に抗うこともなくジッと待っていると、ゆっくりと瞼が下りていく。
 それを最後に、辛うじて保っていた意識がすうっと吸い込まれるように暗闇へと堕ちて行った。