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紺碧の空 番外編【完結】

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 僅かに蒼褪めている頬に触れ、冷たくなっている肌を掌を使ってやんわりと包み込んだ。
 壊れてしまった左目の涙腺から、熱い涙がしきりに溢れ出している。構わずに喋り続けているから、口に入った雫でしょっぱい味がほんのりと舌に広がっていった。
「仕方が無いから……ちゃんと責任を取って、俺が君の面倒を見てあげるよ」
「……え?」
 そう告げた途端、驚いたように丸くなった彼の碧眼の中に、映りこんでいるのはたった一人だけだった。グリーンのスクリーンに揺れる自分の姿をジッと見詰めて、アルフレッドは頬に微かな笑みを浮かべる。
 顔半分を包帯で巻かれている己の顔は、何だか他人みたいに見えたので丁度良かった。目を合わせたまま小さく肯くと、つられるように瞳の中にいる自分も肯首する。当たり前の現象だったけれど、それに少しだけ安心している自分がいた。
 ――――きみが、俺の新しい家族になる人かい?
 初めて出逢った日に言った言葉。彼に向けて初めて発した自分の意思。
 それを今、再び唇に宿らせる。
 弱虫で臆病だった昨日までの自分は、海に墜落して消えてしまった。後に残ったのは、義理の兄を純粋に愛している少年の頃の心を持ったアルフレッドしかいない。
 今日から始まる、自分たちの新しい形。新しい物語。
「俺だって愛してる。愛してるんだ」
 アーサー、と。
 名前を紡ぐ前に、性急に落ちてきた彼の唇に口を塞がれていた。強く押し付けられる唇に喉が鳴り、咄嗟に硬い金髪の頭に手を回す。
 キスを介して一つに交わっていると思った。まるで地平線の空と海みたいに、決して一つになる事の無い個体の自分たちだけど、心はちゃんと融合して、互いの中で混ざり合っている。
 やっと一つになれたのだ。
 これから色んな困難や隘路があるかもしれないけれど、君とだったらきっと乗り越えていける。一緒に生きていきたい。
 そう思わせてくれるこの人を、今度こそ躊躇う事無く幸せにしてあげるんだと、子供みたいな素直さで強く決意を産み落とし、アルフレッドは掌に馴染んだ金の髪をくしゃりと握り締めた。