北極星なら分かるよ
冷たいてのひらは、ああ、どうして。
冬の夜はとても寒くて、僕は空を見上げる。
空気が冷たいと、星が綺麗に見えるのかな。
いろいろなことを勉強したつもりだったけれど、星のことはあまり知らない。
(冷たいなんて思ったけれど、)
本当はその冷たさを感じたことはもう遠い昔のはなし。
「あーさむい!」
前をずんずん進む、兄さんの赤いコートがくるりと夜に舞って、
独り言のような、それでいて僕に返答を求めているような、つまりはわがままな呟きが聞こえた。
「そんなに寒いの?」
僕の声が、僕の中に響く。
「そりゃもー」
「こんな感じ」
そう云って、兄さんは右手で僕の手をぎゅうっと握った。
おそらく、その手は恐ろしいほど冷たいのだろう。
(僕のからだもきっと。)
こうやって、自虐的な遊びをする僕らは、かみさまから見放されるかもしれないなあ、なんて思いながらもう一度空を見上げた。