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生きていて、死んでいるなら

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 目を閉じて。そう、地球色のガラス細工を薄い瞼の奥に隠してみる。
そうすると世界は驚くほどシンプルで、何もかもがスムーズだった。
欲しいものはひとつしかなくて、なりたいものもひとつだけ。
何も考えずに、目的にために最短距離で歩みを進めることができるのだ!
でも。
もう一度瞼をおしあげる。
でも。
「それは死んでいるのとおなじだ」

あの驚くほど怠惰な男は、そうぽつりと云ったのだ。
あの、ガラス玉から最も遠いきらめきを失ったような瞳をした男は。
にごった目を決して、にごっているけれども瞼の奥に押し込めない男は!
私は生きていて、生きている。
たくさんの生命の上に生きている。
「苦しくても、迷っても、それが生きてくってことだ」
あの男はなるだけなんでもないことのように、自分の人生から得た教訓を私と新八に与え続けた。


だから私は涙をこぼしても、血反吐を吐いても目を見開いて生きていくのだ。


死んでない、生きている。