最後のシ者?
奴は俺にそう言った。
…そのセリフ、めっさ聞いたことあるんですけどォォォ!
「 最後のシ者? 」※エヴァのWパロ。…すみませ…。
………。俺はこれからどうすれば、いい。辰馬も。桂も。銀時も。みんな俺の前から去ってしまった。
あの、壮絶な戦いののち、残ったのはたった、この身ひとつ…。
…俺は、一体何故、こんなになってまで生き永らえちまったんだ…。
目の前に広がる海に向かって俺は独りごち、石を投げ入れた。
石は海面すれすれの低空飛行で、ぴょん、ぴょんと跳ねてのち、ぽちゃん、と海に沈んでいった。
………もう、つかれちまったぜ…。この世に未練なんてねェ。さっさと松陽先生の元に行っちまえたら…。…なんてらしくねぇ、か。
いろいろな想いが表れては消え、消えてはまた表れる。そんな自分の思考の海へと潜っていたが、なにやら旋律が耳に入ってきて。一気に海底から海面へと引き戻されてしまった。
――― ♪ fum-fufu-m fu-fufu-m fum fu-fum fu-fufu-m … (タラコのメロディですw)
………どこからだろうか。 せつなげな旋律が聴こえてくる。ちょっと掠れた低い声音は、すぐ側にある左岸のほうから聴こえてくる。その声は無意識のうちに俺のこころにじんわりと沁み入ってくる。いい声だ…。なんとなく耳を傾けていたら、ふっと旋律が途切れた。
「マヨはいいねぇ、マヨはリリンが生み出した食材の極みだぜ…。なぁ、そう感じないか?」
そう言って、ふと俺に目を向けたアイツは。
まるで、この世のものとは思えない美しさだった。
漆黒の常夜のような髪。透けるような白い肌。深い湖を思わせるような静謐で深い蒼を湛えた瞳。
すらりと伸びた手足。神がもしいるのだとしたら、きっと最高の逸品だと、自慢するであろう完璧な容姿。
その姿を讃えるかのように夕日が背後で明々と燃えていた。
その美しい顔が俺に向って花が咲いたようにほっこりと笑んだものだから。
たちまちどきゅーーーん、と胸をわしずかみにされたような感覚に陥ってしまった俺だった。
一瞬のうちに目の前のアイツに墜ちてしまった…。
…さっきの感傷的な感情はどこかへ吹っ飛んでしまった。
「な、なぁ。テメェなんて名だ?俺は晋助。高杉晋助だ」
「俺は、土方十四郎だ」
「なぁ、十四郎、俺はお前を十四郎って呼ぶから、十四郎は晋助って呼んでくれ」
「あぁ。わかった。晋助、だな」
「ところで、晋助。さっきの続きだが…」
「おおぅ!なんだ?」いきなり名前を呼ばれて天国へと行きそうなくらい舞い上がる高杉だ。
「マヨって素晴らしいと思わねぇか?どんなものもマヨをかければ一瞬で極上の味になるんだぜ?」
「…マヨ…か…」マヨの話題なんてどうだっていいのに…と俄かにがっかりしてしまう。
「ま、まぁいいんじゃねぇか?俺はそこまでじゃないが」
「そう、か…。どれくらいマヨが好きかは人それぞれだしな」ちょっと視線を伏せてから笑んでみせたその顔はちょっとせつなそうだ。それがマヨに対してじゃなきゃどれだけいいか…。
「なぁ、十四郎、これから飯でも食いにいかねぇか?」
すると十四郎は眼をキラリ光らせてから
「いい店あんだ、一緒に行くか?」と言って岩から降りると俺に向かってきた。
歩く姿もキリリとして美しくて…。見惚れてしまう高杉だった。