二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

おでんとハゲと冬の夜

INDEX|1ページ/1ページ|

 
深夜勤務中の都営浅草さんと都営新宿さんの二人は、事務所でだらだらしておりました。
繁忙期の年末です。終夜運転にも備えて、交代で深夜勤務が始まったのです。
新宿さんはおおきく口をあけてあくびを一つ、うーんと腕をのばしたかと思えばすぐに丸まってデスクに突っ伏してしまいます。
「あー夜勤だりぃ…眠い…」
「寝るなハゲ」
斜め前に座った浅草さんは先ほどから折り畳んだ腕の中に顔をつっこんだままぐだぐだ言っている新宿さんを冷ややかに一瞥して、終夜運転マニュアルを丸めその額めがけて降りおろしました。
「痛っ!つかハゲじゃねぇ、チャーミング!」
「略したなおい」
「あー…腹減った」
「何もしてねーだろ」
くわっと顔をあげた新宿さんですが、頭の上をまだふらふらさまようマニュアルをぱしっと払いのけるだけで、いつものような元気はありません。
「ったく……ほら」
「うわっ……」
見るに見かねた浅草さんは立ち上がると、椅子の背もたれにひっかけてあったリーフカラーのダウンジャケットを新宿さんの頭の上へばさりと落とし、自分も赤色のダウンジャケットを肩にかけます。
もぞもぞとジャケットから頭を出した新宿さんはにやにや笑っています。
「何笑ってんだよ…気持ち悪ィな…」
「おまえも腹減ってたんだろ?まあまあ、隠すなって!新宿さんにはお見通しだぜ?」
「はいはい、とっとと行くぞ」
「おう!」



赤い髪と芥子色の髪の凸凹を等間隔の街頭が照らしています。二人の手にはビニール袋がそれぞれぶら下がっています。
「おまえさ、食べ合わせとか考えねーの?」
「うっせーな」
浅草さんはうえぇ、といかにもな顔で新宿さんがぶらぶらと揺らすビニール袋の中身を指さします。中にはおでんと新宿さんのお気に入りのコーヒー缶が入っていました。
「コーラにスルメってどうかと思うけどな!」
「ほっとけ!」
吐けば白く曇る息がふわっと広がりすぐに消えていきます。普段からとうていかみ合わない言い合いばかりの二人ですが、こうして並んで歩いているとなんだか変な気分だな、浅草さんはぼんやりと光る地下鉄入口を見つめながらおもいました。
「新宿」
「ん?」
「……や、なんでもねぇわ」
「なんだよ!言えよ!」
「いや何でもないって」
「気になるだろうが!」
「じゃあ言うけどさぁ……」
何歩か先に進んだ新宿さんは浅草さんの声に振り返り、問いかけに一歩、二歩とあゆみよってきます。
「俺は」
二人分の白い息が混じりあっては消えていきます。
「おまえの後頭部が心配だ」
「はああ?」
いつになく神妙な面もちの浅草さんに、新宿さんも次の言葉を身構えるように待っていたようでした。しかし浅草さんの口からこぼれた言葉は、がくりと肩を落とすようなものでした。
「ハゲハゲ言いやがって……!」
「いやホント、やばいぞ」
「うっせ!死ね!」
新宿さんは寒さで赤くなった頬をさらに上気させて怒ると、ぐるりと進行方向を地下鉄入口に変えすたすたと歩いていってしまいます。
だんだん遠ざかっていくリーフカラーの背中を見ながら浅草さんはふぅ、と小さなため息をつきます。
(やっぱおまえが好きだ、とか言えないだろ)
照れ隠しでしょう、頭をがしがしと掻いた浅草さんは汁がこぼれるだろハゲ!と呼びかけながら、小さくなっていく後ろ姿を追いかけました。

おわり。
作品名:おでんとハゲと冬の夜 作家名:三弦