二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

うらやましいことだらけ

INDEX|1ページ/1ページ|

 
お前が、羨ましい。
―――というのが、家康の口癖だった。それは独り言のように、唐突に、静かに呟かれる。特にこちらの返事や反応を期待しているのでもなく、かといって続く言葉も無い。なのに視線だけはしっかりとこちらを向いている。その度に、政宗は、僅かに居心地の悪さを覚えるのだった。適当に相槌を打ったり、茶化したり、時には無言を貫いて誤魔化しているが、何度繰り返しても無視することが出来ない。何も感じずに、その言葉を聞き流すことが出来ない。こちらを見る家康の眼が、眩しいものでも見るかのように細められているからだ。
「お前は何でも持っているな」
再び平定された奥州の地を見渡して、家康は言った。同盟を結んだあの日から思っていたことだが、家康の言葉には称賛のそれが多い。意図してやっているのではないかと勘繰りたくなってしまうほど、奥州を、部下を、自分を褒められて、政宗は最初、困惑を隠せなかった。本心で言っているのだと分かってからは更に呆れた。彼の言葉に悪い気がしなくなってきている自分にも、だ。
しかし、だからといって懐柔されるわけにもいかない。
「Ha! ついでに天下もありゃperfectなんだがな」
牽制にも似た言葉を投げてやると、帰ってきた反応は予想外のものだった。
「天下だけでいいだなんて、羨ましいよ」
「………」
また出た。 政宗は眉をひそめた。
一体、どうして。そんなに羨ましいのだろう。この力も技も家臣も国も、政宗にとって誇れるものだ。だが、家康の羨望を額面通りに受け止め、単純に気分良くしているほど、政宗は素直ではなかった。認めるのは癪だが、こちらを羨むほど、家康が何も持っていないようには見えない。単純な力なら家康の方が勝っているだろうし、言葉を介さず通じ合える家臣もいる。国も、日の本を二分すると言わしめるほどだ。そして家康自身もあらゆる意味で大きくなった。―――あと天下以外に、何が足りないというのか。
「じゃあ、アンタは何が欲しいんだ?」
初めて、政宗は問いを返した。家康はやはり返事を期待していなかったのか、驚いてぱちりと瞬きをした。
「…そうだなあ……」
暫し考え込むようにしてから、眉尻を下げて笑う。
「改めて訊かれると、困るなあ」
「Ah?」
「ありすぎて、分からない」
逆に手助けを求めるような顔をされる。また、居心地の悪さが政宗の心の端を掴んだ。そんな顔をされても、欲しいものが分からないのでは、くれてやりたくても与えられない。ただでさえ差し出せるものが少ないのに、次に掛けるべき言葉すら、見失ってしまいそうだ。