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 錆は表情のない男だった。少女と見紛うほどの面差しは可憐とさえ言えるが、その顔は何を考えているのだかわからぬところがある。
 しかし、とがめが言葉を重ねて褒めた剣士としての腕はたしかなようだ。向かい合うだけでも、その間合いを感じる。否、間合いなどないようなものだ。間合いがあるのはむしろ、七花の方に他ならない。
「——とがめを」
 七花は口を開いた。
「どうして助けたんだ。あんた、とがめを裏切ったんだろう」
 錆は答えなかった。まぁいいや、と七花は構えた。
 錆は構えるということをしなかったが、それは余分な動作がいらぬからであろう。
「とがめを助けてくれたのは、礼を言う」
「……鮫のことならば、礼を言われることでもない。そもそも、おぬしたちの船を切ったのは拙者だ」
「それでも、俺じゃ間に合わなかった」
「——そうだろうな。しかしそれは」
「どうでもよい!」
 割り入るとがめの声に七花は驚く。なんとか足場のあるところに隔離されはしたものの、水をしたたらせて叫ぶとがめはまるで立場を忘れているように見えた。
「どうでもって、いいことないだろ。とがめ——」
「とがめ殿の言うとおりでござる」
 反論をするのは七花だけだった。
 錆が、口金を切る。
 すこしのぞく刃は、刀身がないのかと錯覚するほど薄く、向こう側を透かした。
 薄刀・針——十二本中もっとも薄く、軽く、脆い刀。そえこそ、錆白兵がすこしでも手元を狂わせれば、たったそれだけのことで折れ、壊れてしまうだろう刀身だ。
「拙者に——ときめいてもらうでござる」
「はは、ただしあんたは八つ裂きにやってなっているだろうけどな」
 互いにかける言葉はそれきりだった。

 ——あとはもう、抜き身の刀が触れあうばかり。
作品名: 作家名:しゅうぞう