ワールドイズアキラズ
お前が一番いい『怒り』を持っているのに、と残念そうにその悪魔が呟く。
このアキラがあの抜け殻になったシキのところに居たアキラなのだろうと軍服を着こんだアキラは諒解した。
「そうだ、俺たちはこんな風なことを望んでたんじゃない……」
それでも、あのシキのところに戻りたいのか、と思い一つ軍服が頭を振る。どんな形であれ、シキと共にあろうと決めたのは『アキラ』たちだ。
「俺は、シキと殺り合えるならどちらでもいいが……確かに俺の追っているシキのいるところに帰してほしいな」
クロスを下げていない、派手に素肌をさらす黒いコートに身を包んだアキラが刀を携えながら呟く。
シキを殺そうとしているとは。このアキラはどんなシキを見たというのだろう。
「おれも、シキがいるならどこでもいいけど」
白いワイシャツを肩に引っかけただけの(自分の顔でそれをやられると少々目のやり場に困る)アキラが口を開く。なんとなく、この『アキラ』が、この悪魔に一番近い感じがする。……必要なものを、捨てさせられてしまっている。
「俺は、俺を壊したシキがいい」
虚ろだった瞳が一瞬光を宿す。強い意志の表れ。
やれやれ、と悪魔はあきらめた。
「おもしろそうだと思ったんだけどな。やっぱりアキラはそれぞれのシキじゃないとだめなのか。ま、いいさ。『シキ』に飽きたんならいつでも俺を呼べばいい。アキラはいい『怒り』を飼ってるからな」
肩をすくめて、悪魔が呟く。
「俺はコノエ。俺の呼び方は……もうみんな分かったな」
そうして、炎が消える。暗闇が反転して違う世界に切り替わる。
そして、アキラたちが元いた世界に帰れたかどうか、そしてその後どうなったかは……
それはまた別の話。
作品名:ワールドイズアキラズ 作家名:黄色