桜 〜別れ路〜
「動かないで下さい!!」
千鶴は両手で小太刀を掴む。
裏口から外へ出て正面へ回り込んで来た。
気配のする出入り口の前へと飛び出した。
怖かったー
手が少し震えていたー
思わず目を瞑ってしまっていたー
でもー
「よお、千鶴?だよな」
ー え ー
ぎゅっと瞑っていた瞳を開けるとそこにはー
「原田、さん・・・」
「千鶴ちゃん、俺もいるんだけど」
その横には
「永倉さんっ」
突然の事で千鶴は動揺を隠せなかった。
千鶴の手から小太刀が力なく落ちた。
「お二人共、どうして」
それもその筈。
千鶴の目の前には新撰組だった原田と永倉が居るのだから。
途中で、近藤さんとは途が違うと離脱した二人。
それから戦の混乱時で消息など一切不明だった。
ずっと気掛かりだった。
きっと、歳三もそうだった筈。
「ご無事だったんですねっ」
思わず瞳から涙が溢れ出す。
嬉しいのに涙が止まらない。
千鶴のは泣き笑いの様な顔になってしまう。
「おいおい、佐之千鶴ちゃん泣いちゃったぞ」
「お、俺に振るのか」
永倉と原田は笑う。
何にも変わっていない、昔と同じ笑顔。
「あの、中へどうぞ。此処じゃ、寒くて凍えてしまいます」
千鶴は二人を屋敷の中へと招き入れた。