桜 〜別れ路〜
風間との戦いの後、土方歳三と雪村千鶴の二人は人里離れた山の奥地で暮らし始めた。
「と、歳三さん・・・お茶が入りました」
千鶴は言葉を少し詰まれさながら、後ろから声を掛けた。
「ん、ああ」
歳三は少し身を捩らせ千鶴から湯呑みを受け取った。
「・・・」
そのまま歳三は無言で千鶴を見遣る。
「あ、あの」
その視線に耐えられず声を上げる。
「いや、まだ慣れねえんだなと思ってな」
苦笑気味に笑う、歳三。
「え・・・?」
「呼び方だよ。お前のその」
「これでも、大分頑張ってるんですけど」
千鶴は慣れない呼び方に毎日苦戦しながらも努力していた。
以前見たいに『土方さん』と呼ぶ事を歳三が良しとしない為だった。
『これから俺の事は名前で呼べ。良いな?』
そう言われてから早一月余り。
「私、やっぱり『土方さん』の方がしっくり来ます」
「・・・・・・お前も『土方』だろうが」
「そそ、そうですけど!」
「じゃあ、仕方ねえな」
歳三のその言葉に千鶴はほっと胸を撫で下ろすがそれも束の間だった。
「俺も今からお前の事を『土方』って呼ぶからな」
「えっ!?ななな何んでですか」
千鶴は目を大きく見開きながら硬直した。
「そりゃ、お前も『土方』だしな。別に構いやしないだろう」
「・・・・・・・・・せめて雪村でお願いします」
二人の笑い声は小さな家中に響き渡る。
時々怒った様な声や拗ねた様な声ー
何気ないこの日々ー
何時までもそれは、永遠に続くと・・・。