桜 〜別れ路〜
夏が過ぎ秋が過ぎた
白く地面を染めて行く雪。
息を吐けば白く見える。
大分寒く感じる様になった。
「今日は、寒いし身体の暖まる物にしよう」
千鶴はそう呟き外を眺める。
--------ガサッ ドス -----------
『!??』
何やら外が、騒がしい。
「・・・」
此処の場所を知っているのは極僅かな人だけの筈。
『大鳥、さん?』
にしてはやけに騒がし過ぎるし、こんな時間に来るとは考えられない。
何時もなら昼下がりにふらっとやって来る。
それに、どう考えても一人の物音ではない。
千鶴は振り返りまだ寝息を立ててる歳三を見遣る。
昔の歳三なら疾っくに目を覚ましてる筈だ。
だが今はー
此処幾日前から体調が思わしく無い。
「・・・私が、何とかしなきゃ」
千鶴は飾り台の上の小太刀を手にした。
「大鳥さんじゃない・・・」
では、誰?
兎に角、大鳥でないと判断した以上可能性はー
歳三さんを狙う誰かー
土方歳三と雪村千鶴は戦死ー
大鳥の計らいで世間では二人は死亡したものとなっている。
だが、誰かが私達の真実を知ったのかも知れない。
千鶴は瞳を閉じ、小太刀をキツく握りしめた。
「歳三さん、歳三さんは私が命を掛けても守ります」
寝ている歳三に畳み掛ける様に千鶴は囁いた。