櫛の日
「……臨也さん」
「なに?」
「こっちの台詞です。何してるんですか?」
「帝人君の髪を梳いてる」
確かに頭皮に感じるのは櫛の感覚だった。さくさくと短い髪が梳かれていく感覚は心地いいのだが。
「痛いです」
「櫛、苦手?」
「髪短いんで使わないんですよね」
だからでしょうか、と帝人が言うと、そっかー、と間伸びた声が返ってくる。それでも臨也の手は止まらない。
「まだ続けるんですか?」
「うん」
「……はぁ」
わざとらしく溜め息をついてみても臨也のやる気は削がれなかったらしい。彼の気が早々に済んでくれることを帝人は祈るばかりだった。