ほっぺた
そっか、花井は4限が終わるとすぐ、主将会議だとか言って弁当持って出かけたんだったなあ。
それにしても、阿部、何ぼんやりしてるんだろう。弁当を開いたままで、箸も持ったままで。
阿~部ぇ、どしたのぉ~?(ちょん)
「うぎゃ……ぅぅぅ。」
え、何?俺、何かした?頬っぺたつついただけだよね。阿部、何、椅子から転げ落ちてんの?
おまけに、頬っぺた押さえて涙目で、俺のこと見上げて……。
やべ、かわいいかも…。
阿部ぇ、ひょっとして、歯が痛いの?
「うう…。」
うわあ、ありえない。阿部が涙目でコクンと頷くなんて…。
ねえ、阿部。頼むから早引けして歯医者さん行ってきな。そんなじゃ練習もできないよ。…って話かけながら、阿部を起こしてやった。
阿部は、そうするってあんまり口を開けずに言った。
あ~、阿部。ホント頼むから早く病院行ってきて。その無意識の涙をためた目は、殺傷能力ありすぎだよ。