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竹谷と綾部

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ほらーはやくしろと腕を引かれ歩いている。放したって大丈夫ですちゃんとついてきます。そう口に出すのも億劫でただのろのろ引かれている。眠いなどうしてだっけ。ああそうだ寝てないからだと終に頭の中さえもぼんやりしてきて綾部は目前のぼさぼさな髪をぼうっと眺めた。どうせなら負ぶってくれないかなあ。でも髪がちくちくしそうだから嫌だな。うつらうつらしながら考えているとその頭がくるりと振り返った。
「お前眠いだろ」
「わりと」
「しょうがねえなあ」
ぱ。と綾部の腕を放すと竹谷は背を向けてしゃがんだ。
「ほれ」
「いいんですか」
「どうせ負ぶれとか思ってただろ。分かりづらそうですっげー分かりやすいぞお前。ただし今回だけな」
「おやまあ」
それじゃ遠慮なく。と綾部は竹谷の首に腕をまわし肩に顔を埋めた。竹谷が歩き始めると眠気が増してくる。眠いと思えば口に出していたのか竹谷に寝ろと返された。ちくちくしそうだと思っていた髪から土の匂いがした。たぶん自分もそうだと綾部は思う。
作品名:竹谷と綾部 作家名:ROG