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おそらくはちょうどいいこと

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夕飯の時間になっても戻ってこない、穴堀りに夢中になってるのかと思い目線を下に隈なく探してもあの頭は出てこない。放っておけばいいのにと言う様な目で見られても、平滝夜叉丸が面倒で迷惑極まりない同室人を探しに敷地中を歩き回ったのはほかでもない、放っておけば更なる面倒が己に降りかかってくることを重々理解していたからである。そしてやっと、泥だらけな上ぐっしょり濡れた喜八郎を屋根上で見つけた時には、滝夜叉丸の制服もまたぐっしょり濡れていた。  


「だからお前はあああああああああ!!!」
 雨音にも負けない滝夜叉丸の怒鳴り声は喜八郎の耳にも当然届く。喜八郎は面倒くさそうに閉じていた目を開け、滝夜叉丸を一瞥するとまた目を閉じた。
「だから!閉じるな!お前はどうしてこう私に迷惑かけるんだ」
 泥だらけだし水浸し、お前予備も洗わず置きっぱなしだろうどうするんだ雨だぞ私のをいつも借りれると思うなよだいたいお前はどうたらこうたらなんたらかんたら以下多分終り無し。
「滝」
 黙っているならば延々と続くであろう説教を切り上げるため、喜八郎はやっと身を起こした。
「なんだ」
「はぁ……」
 その瞬間ブチっと何かが切れる音がした、かどうかは定かではないが口をひくつかせ「ぬあにがはぁ……だ!?こっちの台詞だ馬鹿者!」と大声をあげる滝夜叉丸にげんこつで頭をぐりぐりとされ、喜八郎は眉を顰めた。面倒くさい……などと自分のことは棚に上げて内心悪態をつけば、目の前の腹から「ぐう」というこの場に似合わぬ音を聞いた。
「なに、滝まだ食べてないの」
 美容やら健康やら、兎に角そういうことに人一倍五月蝿い滝夜叉丸は毎日決まって数分の乱れもなく(暴君に振り回されてる日は別として)夕刻6時には夕飯を食べ始める。つまりこの時間になっても食べていないということは非常に珍しかった。顔を上げそう言えば滝夜叉丸の手が止まり、今度は横からぎゅうと押された。
「だからお前を探してたと言ってるだろう!」
 言ってないし聞いてないという喜八郎の言葉は音になる前に飲み込まれる。よくと見れば自分と同じように滝夜叉丸もびしょ濡れである。毎朝早起きして作り出す自慢のカールは面影もない。どちらかと言うとこちらの方が好きな喜八郎は、カールに費やす時間を睡眠にまわした方がいいのに、というかその方が自分もゆっくり眠れるからそうして欲しいといつも思う。思考が外れながらもぼうっとしたまま滝夜叉丸の顔を見上げていれば、やっと頭からげんこつがはなされた。
「ほらさっさと立て。夕飯はおばちゃんに取り置きをお願いしてある」
「……魚はある?」
「今日は焼き鯖だ」
「それ滝にあげる」
「……お前どうした!?雨に打たれ過ぎて熱でも出たんじゃないか」
「滝は怒りっぽいから……カルシウムをもっと取ったほうがいいよ」
「だからお前は一体誰のせいだと」
「糖分は逆に怒りっぽくなるから駄目だね。プリンは食べてあげる」
「お前プリンが欲しいだけだろう。というかなんでプリンだけ覚えてるんだ?あとこの前も私の分勝手に食べたろう!?いい加減自分の分だけで我慢することを覚え」
「ああもううるさいなあ……」
 立ち上がると同時に、先程やっとはなされたげんこつは再び喜八郎の頭に飛んできた。
作品名:おそらくはちょうどいいこと 作家名:ROG