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愚者

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「臨也さんはいい人だよ。」
折原臨也との接触にあからさまな嫌悪を示す青葉に、帝人はそう言い聞かせる。臨也さんは、ダラーズの為に、力を貸してくれる人なんだから。青葉の思ういい人と帝人の思ういい人は、同じではないのだろう。
帝人は臨也を疑わない。そもそも、帝人はどちらかといえば性善説を唱える人間だ。善意を信じていて、悪意には知らないふりをする。でなければ、ダラーズなどつくれなかっただろう。縛るもののない、如何様にも染まることの出来るものなど。
人間を信じていて、そのくせ人間にさほど興味のない帝人だからダラーズをつくれたのだ。
人間をただ何人も集めれば、そこには無秩序な集団が出来る。放っておけば自分勝手に動きたがる人間に、秩序をつくるのは法だ。そして絶対になるはずの法も、つくるのは人間に過ぎないので、人間に破られる。
秩序あってさえまとめられない人間が、無秩序なままで大人しくしているはずがない。きっかけが何であろうと、折原臨也や青葉が何もしなくとも、遅かれ早かれ『無色』なダラーズは崩壊していた。
しかし、帝人には想定することもなかった事態なのだろう。
それは帝人が他者に悪意をもたないからだ。けっして帝人は善人ではないし、その精神が善意だけの単純さでできているとも言いはしない。ただ、帝人の関心は概ね内に向いていて、悪意という関心を外に発することがない。だから帝人は、悪意をもってして動く人間を理解できないのだ。自身がそうとしないこと、自身が考えにいたらないこと、それらには気付かないから。
自身が愛するダラーズを悪意をもって見る者がいるなんて、という考えは人間の善意を信じていると言うよりは、自らの善意の絶対性を信じていると言うほうが正確かもしれないが。
そんな帝人にとっては、臨也はいい人なのだろう。
帝人をダラーズの創始者と知り、理解者の顔をしてダラーズに対しての協力を惜しまない。帝人から見た臨也はそんな風に、帝人にとって、ダラーズにとって、都合良いものなのだ。
きっと、青葉の言葉は届かない。正臣や杏里でも無理だろう。
帝人は臨也をいい人だと信じたままで、帝人にそう思わせておくことに臨也が意味を見いだしている間は、帝人の中の臨也の印象は変わらない。
もし変わる時が来るならば、それは多分何もかもが取り返しのつかなくなった後なのだろう。




作品名:愚者 作家名:六花