無情にも、
青峰は、嫉妬することさえ馬鹿らしくなる程の強者だった。それはまさしく王者と呼ぶに相応しく、何をも寄せ付けない背の、なんと美しいことか。孤高のようなと、羨望をあるいは怨嗟を込めて見つめる者もいるのだろう。
だが、今吉には、青峰のそれはただの孤独にしか見えなかった。その証拠に、諦観をまとわせた眼がわずかの間に宙を泳ぎ、失望の色に染まっていく姿を、何度か見たことがある。
だからこそ、今吉は青峰を強者と認めたのだ。精神を苛む程の孤独を身の内に飼い、苦しみながらもその最たる原因から逃れることの出来ない業こそが、青峰を強くするのだと。
王は、孤独でなければならない。
どれだけのものを切り捨てて、青峰は独りで立ち続けるのか。今吉はそれが、見たかった。背筋が震えるほど、その姿を待ち焦がれる。いっそ偏執狂のように。
だが、強い生き物に反発しながらも惹かれるのは、仕方のないことだろう。一体誰が今吉を責められるというのだ。
(お前の苦しみに気付いてるんやけどな、ごめんな。)
苦しみさえ糧にして、誰も彼も足蹴にしながら進むしかない青峰を眼にすることが出来るなら、かすかに痛む良心などなんの意味もなさなかった。