一方的な嘆き方
私のその問いに、眼を細めるだけだったテツ君。淡い色合いの眼は、凍り付き時を止めていた。
その頃の私はどうしようもなく焦っていて空回りばかりで、自分が口にした言葉の意味にさえ気付けなかった。浅はかで残酷だと罵ることもなく、答えを返さず立ち去ったテツ君は、優しかったのに。それなのに、私はテツ君の無言に絶望を覚えた。
テツ君なら、と思っていた。テツ君なら青峰君をずっと選んでいてくれると。何があっても隣り合って、青峰君を本当の独りぼっちになんかしないと。
テツ君に対する甘え癖が当たり前になって、それを身勝手だと感じる心を忘れてしまった。だから、そんな酷いことだって言えたのだ。
迷って苦しくなったら、コートの中と同じように欲しいところにパスをくれる。テツ君は、誰より大人だと思っていた。彼の言葉は親や教師のものよりも、心を揺さぶるのに長けていたから。何時も見守っていてくれるような、気分になっていた。
私がテツ君を好きだという気持ちに、嘘はない。彼以上に私の心をときめかせる人なんて、いなかった。テツ君の一挙一動に落ち込んだり舞い上がったりした。
けれど、大事なのは青峰君なのだ。そして、テツ君も青峰君を大事に思っていると信じていた。その関係に終わりはなく、ずっとバランスを保ったままで続いていくと思っていた。
どうして、そんな風に疑いもせずに思い込んでしまったのだろう。
テツ君は大人なんかじゃなかった。私たちと同じ年齢の、少しばかり視野の広いだけの子どもだったのに。
ごめんね、なんて呟いても、優しく甘やかしてくれる人は遠くに行ってしまったから。私も捨てられたのねなんて、嘯いて悲劇のヒロインを演じてみせた。