純情BOY
今日も流れる汗を腕で拭いながら、青峰は黒子の隣に声をかけることもなく腰をおろした。隣からは、荒い息だけが聞こえてくる。それに耳を傾けながら、先程桃井に渡されたドリンクで口内を潤す。
すると、不意に部活中も少し冷たい指先が、そっと青峰の腕の筋肉をなぞった。指の動きに躊躇いは微塵もなく、あまりのなめらかな動きに、青峰はぽかんと動きを止めることしか出来なかった。
「…テツ?」
「ああ、すみません。つい触ってみたくなって。」
謝りながらも、黒子は触るのをやめない。まじまじと青峰の腕を見る黒子の眼は、観察者のそれとも少し違う気がする。
青峰の腕が、引きつるようにわずかに震えた。暑さからくるのとは別の汗が、手のひらを湿らせる。
黒子の触れ方に、妙な雰囲気をもたらすものはかけらもない。けれど、青峰にとっては触れ方云々よりも、触れられているという事実こそが大事だった。
黒子の手を払うことも出来ず、自由なもう片方の腕で頭を抱えるように俯くと、青峰は内心身悶える。
ひたすら触るだけの黒子はまるで好奇心旺盛な猫のようで、青峰はつまみ上げて抱き締めたくなるのをぐっとこらえた。