百害と一利を天秤にかけ
プロローグ
私はたしかに非日常に憧れを持っていた。世界が退屈に感じられてしょうがなかったし未来に大した希望も抱いていなかった。いつもどこかでフィクションじみた展開を期待していた。だけど今にして思えばそんなものは訪れてしまうほうが不幸なのだ。そんなものに遭遇してしまえばきっと誰もが後悔する。そして願うのだ。「日常に帰りたい」と。あの時の私のように。
あの世界に関わるために私が出会った相手が武藤カズキや津村斗貴子だったらば状況は違ったはずだし、可能性から言って一番妥当だったのは早坂桜花と早坂秋水だったはずなのだ。それなのに、私は一番最初に彼奴に出会った。
理不尽にも、出遭ってしまった。
百害と一利を天秤にかけ
作品名:百害と一利を天秤にかけ 作家名:綵花