別離のない交わりを
なんて、澄んだ眼をしているのだろう。
苦悩も苦痛もすべて溶けて昇華されてしまった眼が、ゼロスは苦手だった。
ロイドは、ゼロスを暴く。いっそ暴力的なまでに遠慮なくゼロスの内側を引っ掻き回すから、ゼロスは抵抗も反発も出来た。けれど、コレットは違う。
コレットは、ただ知っているのだ。当たり前に、ゼロスを。神子であるゼロスを。
世界にたった一人だった神子は、二人になった。ゼロスはコレットで、コレットはゼロスだ。
同じものである互いに、神子であるという想いを隠すことは出来るはずもなく。それを痛感させるコレットの眼を、まともに見れない時がある。
けれど、コレットはゼロスを決して逃がさない。思い知らせるように金糸は揺れ、薄紅色の唇は言葉を紡ぐ。
「ゼロスは、いなくなっちゃ駄目だよ。…私をひとりにしないで。」
コレットの表情に悲しみや寂しさが含まれていたなら、ゼロスは茶化してはぐらかしてしまえたのに。
どうして今更、一人ぼっちが二人ぼっちになってしまったのか。最初から最後まで、神子は一人で良かったのだ。そうしたら、平気だった。理解なんて求めずに、諦めたままでいられただろう。
けれど出会ってしまったから、もう一人には戻れないくらい、二人とも弱くなってしまった。
ゼロスは何も言わず、そっと眼を閉じた。背中をおおう紅い髪の下からあらわれたのは、黄昏色の羽。コレットはゼロスのその姿に、ゆったりと微笑む。
二人の神子は、二人の天使になったのだった。