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のらねこ拾いました

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こんにちは、とペコッと頭を下げる。セーラーのカラーがぴょんと跳ねて、
そんな些細な動作ひとつでウィリスのエンジンはオーバーヒート寸前だ。
Hi!今日もとびっきり可愛いね、なんて台詞を言える筈もなく、正面から
目を合わせる事ですらいっぱいいっぱいのまま、ハローとボソボソ言うのが
やっとだった。

「げ、元気だった?」
「はい、元気です!ノラ猫さんはお元気でしたか?」
「う、うん、元気元気。元気過ぎるくらい」
「それは良かったです」
ぽぽぽん、なんて見えない花の咲く音が聞こえた気がして、ますますウィリス
は俯く。いや気がしたなんてもんじゃない。確かにピンクと黄色の可憐な花が
見える。君に会えなくて淋しかったけど今日顔を見られたから元気になったん
だよ、とはやっぱり言えない。
代わりの当たり障りない話題も見つけられず、ふたりの間に沈黙が落ちる。


「あの、」
「そうそう私、」
口を開いたのは同時で「どうぞ」「ううん武蔵ちゃんから」という微笑ましい
やり取りの後、武蔵ちゃんからというウィリスの意見が採用された。
「あの……私、この間のらねこ拾ったんです」
ニコッ。
またしてもぽぽぽぽんと花が散ったが、今度はウィリスの目には入らなかった。
「?!」
え?え?俺?いつ拾われたっけいつそんなオイシイ思いしたっけ、いやそれよ
りじゃあ俺は今武蔵ちゃんに飼われてる?!ヤバイどうしようどうしよう!
ぐるぐるグルグル思考が巡り過ぎてオイルが沸騰しかけた頭に、エンジェルは
追い打ちをかける蕩ける笑顔で続けた。

「とっても可愛いんですよ。白と薄茶の斑で尻尾の先がくいって曲がってるん
 です。耳の白い模様がちょっとリボンみたいで」と。


「え………?」
「でも大和兄さまは飼っちゃダメだって言うんです。元いた場所に返してきな
 さいって」
あ、のらねこってstray catのことね……ハハハハそうだよね当たり前じゃん
俺のバカッと頭をかきむしりたい心境のウィリスにはちっとも気付かず、武蔵
は悲しそうに曇らせた瞳をそっと伏せた。
「でも……でも私どうしても出来なくて……ちゃんとご飯食べられるかしら
 とか他のコに苛められたりしないかしらとか考えちゃうとかわいそうで」
ウルンと大きな黒目がちの瞳にみるみる水の幕が張る。
「あんなに可愛いのに……。私、どうしたらいいんでしょう……」
と震える声で呟かれた直後、ほんの数十秒前の脱力はどこへやら、ウィリスは
決意を秘めた声で武蔵ちゃん!とがっしりその小さな手を握りしめた。









「あれー?トーマス、アンジー見なかったか?」
「またヘルメスんとこじゃない」
「なんでアイツなんだよ!俺の方がアンジーを可愛がってんのに!」
「……………可愛がり方がキモいからだろ」





                    <のらねこ拾いました>



作品名:のらねこ拾いました 作家名:_楠_@APH