夢 〜 残像 〜
「ゆめ」
少し汗ばむ身体を床から起こす。
身体が熱い。
でも何となく寒気もする。
「おい、何起きてやがる」
不機嫌そうな顔して、襖を開け土方が入って来た。
「土方さん、どうしたんですか?」
土方が千鶴の部屋に来るなんて珍しい。
少し染まった頬をし、大きい瞳をぱちぱちと動かし土方を見遣る。
その様子を見て大げさに溜息を吐いて見せた。
「え、あの」
「覚えて無いのか」
「何をですか?」
「花見の途中で急に倒れただろうが」
「私が、ですか」
千鶴は驚きながらも、思い出そうと記憶を巡らせた、が。
「・・・・・・すみません、全く記憶にないです」
「まあ、だろうな。かなり酒がまわってやがったからな」
土方はそう言いながら千鶴に湯呑みを手渡す。
中身は水だった。
千鶴は礼を云い湯呑みに口を付けた。
耳を澄ますと遠くから賑やかな声が聞こえて来た。
きっと土方の云う花見の者達の声だろう。
「ん、なんだ」
千鶴がじっと土方を見遣る。
「いえ、土方さんが倒れた私を運んで下さったんですか?」
「まあ、な。他の連中は酔っ払いばかりで使い物にならねえから、だから俺が」
跋の悪い顔をして土方は視線を逸らした。
言い訳がましいと自分で云って自分で思う。
本当は素面の者なら他にもいた。
他の者が連れて行こうとしたのを制止して、半場強引に自分が千鶴を抱きかかえて来た。
我ながらガキ見たいだと笑いが込み上げて来る。
ーまさかこの俺が、なー
「土方さん?」
「・・・」
土方は千鶴の言葉には返答せず、窓から外を覗いた。
「 さくら 」
窓の外には生温い風が散らす桜の花弁が舞う。
「私、夢を見ていました」
「夢?」
「満開の桜の下に私がいて、隣に土方さんがいました」
「俺がか」
「でも次第に土方さんの姿が・・・消えてっ・・」
冷たい雫が止めどなく千鶴の瞳から零れて落ちる。
「す、すみませんっ・・・私」
千鶴は零れる雫を拭い笑う。
「お前は何に怯えている、千鶴」
土方は千鶴を自分へと引き寄せ強い力で抱き締めた。
「土方さ、」
「俺はそんなに弱かねえよ。
俺がお前を守ってやる。
だからもうお前にそんな夢を見せたりはしないから、安心しろ」
「はいっ」
千鶴は笑い、土方の背に手を回した。
決してこの土方の傍を放れない。そう感じる程に。
ぎゅっと力を入れて。