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観覧車内です。外を見ましょう。

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ホワイトの記憶が正しければ。
観覧車とは本来、目線が高くなることによって小さく遠くなる下界の風景を楽しむものだったはず。
そう、何はともあれ。まずは窓の外を見なければ始まらない。

だというのに。

どうして、同乗者は外の風景を楽しもうとしないのだろう。
どうして、自分をじっと見つめてくるのだろう。
更に掘り下げて言えば、最初乗ったばかりの時は、向かい合わせで座っていたはずなのに。
いつのまにやら、この男……「N」と名乗っているが、これは偽名であろう……は、何時、自分のすぐ真横に座ったのだろうか。

触らなくとも人間の体温が感じられるぐらいの、近距離。
しかも相手は知り合ってからまだ日も浅い、年上であろう、異性。
意識したくなくても意識してしまう。

なるべく相手を見ないように、目線は自分の靴先にやって。
だけども、横合いから伸びてきた大きな手が、太股に置いていた自分の手を取ってきたのに驚いて、反射的に振り返ってしまう。

マスカットを連想させる、鮮やかなライトグリーンの髪。
帽子のツバの陰に隠れて見えない瞳に、口元に浮かべた微笑はどこか妖艶だ。


「やっとこっちに向いてくれたね」


ややキザな声が、鼓膜をふるわす。
それを耳障りと思うまもなく、もう片方の手でがっちり肩をホールドされ、そのまま一気に抱き寄せられてしまった。
今や二人の距離は無いに等しく、互いの胸と胸が密着した状態。

突然の出来事にパニくった頭が勝手に思い出したのは、何故か小さい時の思い出で。
冗談半分でベルと一緒にチェレンに抱きついたりした情景が、思い浮かんできたのだった。
すぐ顔を真っ赤にする、あの生真面目君の反応が面白くて。懲りずに、背後から隙を突いて、繰り返しやった記憶があるのだが。

その時感じた、薄く柔らかった感触とは正反対の、ごつごつして逞しい印象に、思わず(男の人って感じ・・・)とときめきに似た感情が駆け巡る。
無論、肩からウエストに手が下がってきた感触に、我に返って相手を突き飛ばそうとしたのだが。
腕に力を入れる前に、耳にふーっと吹きかけられるなま暖かい息。
ホワイトは思わずヒャアッ!?と悲鳴をあげてしまった。

そして「何すんのよ!」非難するまもなく、手首を掴んでいた相手の手が離れ、自分の後頭部にあてがわれ、更に相手側に引き寄せられる。
自分たちが乗っているゴンドラが、頂上に達したのだろう。窓いっぱいから陽光が差し込み、暗がりだったNの目元を照らした。
光のない、塗りつぶしたような、やや精気のない瞳。それに怯えた表情の自分が目一杯写っているのが見える。
今何をされているのか。それがわからない程ホワイトは子供ではなかった。


(口から息ができない)

(唇の自由が利かない)

(そんな、初めてなのにーー)




【観覧車内です。外を見ましょう】