スペイン親分とでかロマーノ
「あれぇ・・おっかしいなぁ。どこ行ったんやろ・・。」
仕事から戻り、家中を見渡してもロマの姿がない。
部屋はいつもの様に荒され・・いや、掃除されてはいたが。
気のせいかいつもより『掃除』が激しい気がするが、今は置いておこう。
まずはロマーノを探さなくては。
「ロマー?ロマーノ〜?おーい・・」
まさか。
フランスやトルコの顔がよぎる。
「アイツら、まさか俺の居ない間にロマーノのこと・・!」
・・・ドゴーン・・ドゴーーン・・
地響きのような音が屋敷に響く。
「!? ロ、ロマーノー!!?」
音のする方へ走る。
玄関を抜け庭の中央まで来たが、何も見当たらない。
「おかしいなぁ・・こっちから音したと思ったんやけど・・」
ガザガザッ
「うおっ!!?」
「・・・・しょーがぁ・・」
暗がりでよく見えないが、草陰で何かがうごめいている。
ロマーノのいつもの悪態が聞こえた気がするが、気のせいか妙に響く声だった。
「ロマ?・・そこにおるんか?」
「・・・ぐすん」
「・・またシエスタしておねしょでもしたんか?怒らんからでてき?」
何か怒られると思っているのだろうか。
いつもは怒られてもそ知らぬ顔をしているロマーノが、一体どうしたのだろう。
なにかとんでもないことをやらかしたのかもしれない。
できる限り優しい口調で話しかけると、草陰が大きく揺れた。
ガサガサ・・・
「・・・えっ?な・・お前・・えぇぇぇぇええ!?」
そこには、目の前に立ちはだかる大きな影。
「なんか・・大きくなっちゃったぞコノヤロー!!」
でかい。2m・・いや3m以上はありそうだ。
しかし、まぎれもなく子分のロマーノである。
大きくなったと言っても成長したというわけではなく、
ただ単に小さなロマーノをそのまま拡大したような感じだ。
「ちょっ!お前それどうしたん!?悪いもんでも食ったんか!?」
「知らねーよっ!掃除して疲れて、シエスタして起きたらでかくなってたんだよちくしょーがぁ!」
ロマーノに悪気はないのだろうが、大声を出されると鼓膜が破れそうだ。
「わ、わかった!・・とりあえず家はいろ?なっ?」
「・・・」
ロマーノもショックのようで、元気がない。
目が赤くなっている。
ずっと泣いていたのだろう。当然だ。
自分の体がいきなり巨大化したら、誰だって戸惑うし怖いはずだ。
ましてはロマーノはまだ小さな子供だ。・・今は大きいが。
とにかく、一人で心細かっただろう。
「元気だしぃ!親分がなんとかしたるから心配せんでえぇ!」
と、頭をポンポンしようとした・・が
「とっ、届かん・・ジャンプしても届かん・・」
「・・・ぷすぷす」
「コラっ!何笑っとんねん!人が心配したってんのにっ!」
「ちーび!!だっせぇ!!・・ぷすーっ!!」
「うっわ!かっわいくなぁぁ!」
グゥォォォォオオオオオオ
「・・・今の、腹の音?」
まるで怪獣の雄たけびだ。
「お、俺じゃないぞ!お腹の中のリスのお腹が鳴ったんだぞっ!ちくしょー!」
「・・・お前いつリス食ったん?」
大きなロマーノを無理やり玄関のドアにぎゅうぎゅうと押し込みながら、
『トマトがプチトマトみたいになってまうやん・・どないしよ・・』
と、今夜の夕食を案じ、盛大に溜息をつくスペインであった。
つづくかもー!!
作品名:スペイン親分とでかロマーノ 作家名:トメ子