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いれもの-プロローグ-

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この世界には神様たちがいた。
神様たちは死ぬことがない。けれど人間と一緒の世界に生きていた。
神様たちは人間よりも大きな力を持っている。けれど静かに暮らしていた。
人間はそんな神様たちを崇めつつ、寄り添いながら平和に日々を過ごしていた。


いれもの


ある村に双子の兄弟が生まれたのは、もう二十年近くも前のことだった。
彼らが赤ん坊の頃からその愛らしさは村中に響いていたけれども、
成長するにつれてその美しさは浮き彫りになり、皆を魅了した。
双子の顔立ちは似通ってはいなかったが、どちらも大層整った顔立ちをしていた。
そんな2人の性格はというと、片方は大人との会話も楽しめる利発な子で、片方はとても天真爛漫な子。
しかしその仲は睦まじく、いつも一緒に遊んでいて周囲の者の顔を綻ばせた。


ある夏の雨の日も、2人は家の中で一緒に遊んでいた。
しかし、家の中で出来る遊びは片方には退屈でしかたがない。
たまらず、もう片方に外で遊ぼう、と提案をし始める。

「いざやいざや!お外いこ!お外であそぼ!」
「だーめしずちゃん!今雨ふってるでしょ!」
「え~…雨の日のお外もたのしいのに…」
「そういってこの前お外であそんでお着物泥だらけにして、お母さんにおこられたじゃない! わんわん泣いたのしずちゃんだったくせに~」
「うぅ…お母さんのけちんぼ。いざやのわからずや…。」

前回叱られた事を思い出したのか、静雄はぶちぶち言いながらも外で遊ぶ事をあきらめたようだった。
臨也は、その様子を苦笑しながらなだめる。

「はいはい、晴れたらお外であそぼうね。
でも、そうだね。今日ずーっと雨だったらやだなあ。」
「?いざやもお外行きたい!?」
「ううん、そうじゃなくて…。いや、それもあるけどね?むくれないでしずちゃん!
…今日は『七夕』でしょ」

一言目で同意が得られなくてまたむくれてしまった静雄だったが、臨也の言葉に興味を持ち一瞬で怒りを忘れてしまう。

「…たなばたは、雨がふったらいけないの?」
「おりひめさまとひこぼしさまのお話は知ってるよね?
雨が降ったら、2人は天の川を渡れないかもしれないんだって。」
「…会えないの?そんなのかわいそう!」
「そうだね。そうだしずちゃん、お空が晴れるようにてるてるぼうず作ろっか!」
「うんっ!いざや、お母さんに紙もらいにいこっ!」

そうして2人は仲良く母親のところへ駆けて行った。いつもの2人の光景だった。

作品名:いれもの-プロローグ- 作家名:さば