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小さなぬくもりと

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「……さむ」

 スーパーから出た帝人は小さく呟いて、袖口からむき出しになっている二の腕に手を伸ばした。昼間は陽射しとコンクリートからの照り返しとで体感温度はかなり高い。だが陽が落ちるのも早くなり、夜になるとビル風もあってか肌寒かった。
 正臣と杏里との三人で出掛けた帰り、別れた後に本屋に寄るとつい時間を忘れてしまった。空腹を感じて時間を確認してみると、携帯のディスプレイに表示された時間は二十時を過ぎていた。自宅に帰っても、炊飯器の中にご飯はあるがおかずがない。今から作る気にもなれず、帰宅途中のスーパーで適当に惣菜を見繕ったところだ。
 家に帰ればこの肌寒さはなくなろだろうと足早に家路を歩いていると、やあ、と声が掛けられる。聞きなれた声に振り返ると、いつもと変わらないジャケットを着込んだ臨也が立っていた。

「これ、あげるよ」

 差し出されたのは缶の紅茶だった。受け取るとホット缶だったようで、じんわりと手に熱が伝わる感覚が心地よく思えた。

「コーヒーとかの方ががよかった?」
「いえ、こっちのが有り難いです」

 じっと握ったままでいたのが、嫌いなものを手渡したせいだと思われたらしい。むしろコーヒーを貰った方が帝人は困る、今手の中にあるのはミルクティーだった。

「そんな大事そうに握ってないで飲みなよ」
「猫舌なんです。手も寒いので」
「手くらい温めてあげるのに」

 ジャケットのポケットに突っ込まれたままだった臨也の右手が、缶を握る帝人の手に伸びた。 

「……平気で恥ずかしい事しますね」
「そうかい?」
「そうですよ」
作品名:小さなぬくもりと 作家名:千砂