最上の在り方
永久(とわ)を羨む鬼男に、らしくなく閻魔は本気で言葉を吐いた。永久だなんて。永久だなんて。言い募る閻魔は今にも泣き出しそうな赤子のそれだった。
「私は、もう、こんなに辛くて、悲しくて、寂しくて、終わりたいのに」
すると閻魔は横っ面を、鬼男の煌めく爪先で引っ叩かれた。赤い血が垂れる。
鬼男は心底侮蔑したような表情(かお)をした。「その表情(かお)傷つくなあ」と落ち込む閻魔に、鬼男は溜息と共に言う。「あんたの価値観を他人(ひと)に押し付けるのはやめて下さい。あんたとずっと永久なら最上の幸福だと思っただけです」 そう言って背を向けてしまう鬼男の赤い項に、閻魔は手を伸ばした。
ねえ、君に、永久をあげる。
(2010.07.26)