かくも地球に焦がれて
年上の恋人を持つ身として、悩みが尽きないのは仕方ないかもしれないが、けれど、なんていうか。
鏡を見てため息しか出てこない。中学生。中学生って。そんなに童顔だろうか。
そうなんじゃない、と外野の声。やかましい。
この前は、あんまりにもあんまりだったから、自分の恋人に聞いてみたのだ。自分のどこが好きなんだ、と。まさか自分がそんな発言をするとは予想もしていなかった。恋とはおそろしくおぞましく気持ちが悪いものである。自分の恋人はぼんやりとこっちを見ていた。反応が返ってこないと自分の言動が余計にみじめたらしくいたたまれなく思われる。ああもうやだ!
じゃあやめれば、とまた外野。何もわかっていない外野である。まったく、とため息。君ねえ、と声。軽くスルーした。
そうしたら、自分の恋人は、ふっと身をかがませて―――悲しいことに、自分の背は彼のあたまよりずいぶん低い位置にあるのだ―――、その、自分のデコにこう、ね。
うわ、鳥肌たったなにそれ寒い、と声。それは同意しよう。自分が当事者でなかったら、きっと、寒い。
あああああああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
「―――でね、そこで静雄さんなんて言ったと思います?!」
「っていうかなんで君はわざわざ俺のところにシズちゃんの話しにくるかなあ」
「デコ、って言ったんですよあのひと!どういうことですか?!」
「俺とシズちゃんの仲どんなか、君、知ってるよね?」
「ちょっと、ちゃんと聞いて下さいよ臨也さん!正臣にこんな話するなんて恥ずかしすぎるでしょう?!」
「ねえ、俺には?その恥じらい適用されないの?」
「されません。静雄さんと同年代なんだからいろいろ教えて下さいよ」
「俺、心の底から、シズちゃんの恋愛事情なんてどうでもいいんだけど。」
「うらやましいんですか?」
「………君、ねえ」
「僕と、静雄さん、どっちが?」
「殺すぞ」
「そうした瞬間に、あなたという主題は壊れますよね?」
きょとんとした相変わらずの幼い顔で、当り前のように帝人はそう切り返す。臨也は心底からのため息を吐いた。おもしろくないことはない。けれど、不愉快ではある。
帝人は相変わらず喋り続けている。大半といわず、十割のろけだった。ため息ひとつ。見なれた天井を仰ぎ、臨也は思わずつぶやいた。
「―――うっぜ」
少女は相変わらず喋り続けている。
作品名:かくも地球に焦がれて 作家名:ロク