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ルシル+フロワード

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フロワードは背筋を凍らせる。
シオンの城である王宮の廊下で、とても恐ろしい者と相対してしまったからだ。
「やぁ」
まるで10年来の級友に対するように親しげに挨拶してくる。彼の真意が測りかねて、フロワードは思わず顔をひきつらせた。
「酷いな。君にそんな顔をされる様な事をした覚えはないんだけど?」
彼、ルシル・エリスはしれっとした顔で言い放つ。フロワードもさほど気にしてはないが、自分の腕を切り落としたのは酷い事ではないらしい。
普段はフロワードはおろかシオンにさえその姿を晒さないルシルなのに、何故か今こうしてフロワードの前に姿を現す。フロワードに対して何かしら行動を起こすのだとしか考えられない。
「ねぇ?そうだろう?」
いつの間にか壁際に追い込まれていた。知らず知らずの内に後ずさっていたらしい。
ルシルから殺気は感じられない。ただ、訳の分からぬ威圧感と不気味さがある。殺気がないのが逆に恐ろしい。
何故このタイミングで彼は自分に接触してきたのか。フロワードは表情は変えずに頭をフル回転させる。しばらくローランドは領地を増やしていないし、フロワードも表だってフェリスらに罠を仕掛けるようなことはしていない。ガスタークにもあまり目立った変化はないし、そのような事でルシルがフロワードに接触を図るとも思えなかった。
フロワードが答えを出せずにいると、見透かしたような笑みを浮かべてルシルが瞼をあけた。
「・・・君に接触した理由なんて、ないよ。ただ、君をからかいに来たんだ」
フロワードは思わず顔を歪めた。ルシルの真意を測りかねた。
「君は今とても困っているね。君を困らせてからかおうと思っただけさ。ジョークって奴だよ」
ルシルの言葉に重みはない。ただ思ったどうでもよいことを言っているだけのような。
フロワードは身体の力が抜けるのを感じた。
「・・・まさか、本当にそれだけ・・・」
「そ、シオンが今忙しくてね、冗談が言えないから代わりに君をからかってやろうと思ってね」
笑顔でそう言うが、それが本当かどうかはフロワードにはわからない。ただ、目的があってフロワードに接触してきたわけでは無いことはわかった。
気が抜けて、ともすれば座り込んでしまいそうな膝を叱咤し、フロワードは溜息をついた。
「・・・このようなおたわむれを好かれるとは、思ってもみませんでした」
「冗談はよく言うんだけどね。シオンには『お前の冗談は心臓に悪い』なんて言われてしまうが」
フロワードは主人に心の底から同意した。
フロワードが瞬きをした瞬間、ルシルは姿を消した。まるで今までのルシルは幻だと言わんばかりに、唐突に。
「心臓に悪い・・・」
フロワードは憎々しげにつぶやいて、ずるずると壁に背を預けながら膝をついた。
作品名:ルシル+フロワード 作家名:ハクヨウ