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クラウとフロワード

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原作5、6巻くらいの話。

シオンの命令で貴族主催の立食パーティに来ているクラウ達。王宮に近い場所に城を持ち豊富な資金を持つ貴族主催のパーティ。先の粛正を恐れてシオンに媚びを売るパーティらしいが、どうやら媚びを売りたいのは主催者の高齢な城の主ではなく、その息子らしい。城主は高齢のため外出も出来ない自分の元に新しい国王陛下がお越しくださるなど、夢のようじゃと感極まっていた。もはや立ち上がることすら出来ない老人には私利も私欲もないのだろう。
となると堅苦しかったり媚び諂う輩も気にしなくて良いパーティという事になり、クラウは招待客の女の子に声をかけようとしてーーーノアの姿が脳裏に浮かびやめた。代わりに料理をたらふく食べてやろうと料理に手を伸ばし頬張っていると、窓の向こうの部屋にフロワードと城主の息子が話しているのが見えた。
それだけなら別段気にとめないのだが、何故かフロワードがどうみても不機嫌に見えて、クラウは首を傾げた。フロワードが女の子だったらセクハラされて嫌がっているんだろうかと思うところだが、いくら美形とはいえ長身の男では・・・
(・・・何の話をしているんだ?)
冗談は置いておいて、何はともあれ気にはなった。フロワードは感情を表に出さないから不機嫌になった事もないし、城主の息子は反国王派だったと聞く。だからこうして媚び諂っているのだが、どうも接点も分からない。
息子がフロワードから離れた。フロワードは城主と目もあわせずに窓をみている。城主が出ていくと彼はため息をついてーーーふと、目があった。
(やっべ・・・)
覗き見をしていた事がばれてしまっただろうか。しかしフロワードはすぐに視線を逸らすと、部屋のカーテンを閉めた。


カーテンを閉めて、ベッドに少し横になっていたフロワードだが、扉をたたく音に気づいた。フロワードは上体を起こす。
「開いておりますよ、クロム元帥」
扉の向こうの人物は驚いたようだったが、すぐに扉が開かれた。入ってきたのはやはりクラウ・クロム。
「何か?」
ベッドに座ったままのフロワードが訪ねる。
「いや、さっきのお前の様子が気になってな・・・」
「私の様子?」
「ここの息子と喋ってる時のお前、すっげー嫌そうな顔してたぜ」
言われてフロワードは不機嫌な顔になった。
「それだけですか。不機嫌になるくらい、誰だってあるでしょうに」
「そりゃそうだけどよ、お前の感情みたの初めてだったからな」
フロワードはため息をついた。
「彼は養父と繋がりがある貴族でした。養父の事で私に話があったそうです」
「へぇ・・・あぁ、お前孤児だったっけ・・・」
クラウは扉にもたれ掛かった。少し話をしていく気があるらしい。
「戻らなくて良いのですか?」
「別にいいだろう。形だけ出ればいい。もう戻ったっていいくらいだ。カルネもいるしな・・・」
「そうですか。で、元帥閣下は何か私にお話したいことでも?」
棘がある様に感じられるフロワードの言葉に、クラウは臆さず聞く。
「いや・・・そんだけか?あいつ、あの粛正にいなかったから生きてるんだろ?」
「それが貴方に何の関係が?」
突き放して言うと、クラウは今度は言いずらそうに眉根を寄せて言った。
「いや・・・お前、顔色悪いぞ。大丈夫か?」
きょとんとして、心配されているのだと分かって気が抜けた。というより呆れた。
フロワードはベッドに横になった。
「お、おい!」
倒れてしまったと勘違いしたクラウがよってきたが、フロワードは片手をあげてそれを拒絶した。
「・・・問題ありません。お気になさらず」
「・・・っつてもなぁ・・・」
クラウは頭をガシガシと掻くと、ベッドの端に腰掛けた。
「あなたはカーラル・フロワードの噂をご存じですか?」
「お前の親父の噂?いや・・・男の噂は興味ないからな。女の子を拐かしてるって噂も聞いてないし」
「元帥閣下らしいですね」
フロワードは両手で顔を隠して少し笑った。
「彼は男色家でしたので、女性には興味がありませんでした」
「うわ、俺の理解できない人種の一つだ・・・」
「同感です。養父はここの城主の息子と繋がりがあり、彼に好みの小さな男の子がいたら自分の所へ連れてくるように命じていた様です」
「・・・」
クラウは気まずそうに黙った。
「城主に特殊な趣味はないそうですが、息子は男色家らしく、その事で私に話をしたかったそうです。どうやら私を男色家だと誤解されてらしたようで」
「うっわ・・・そりゃ気分も悪くなるわな・・・」
つい本心で言うと、フロワードがくすりと笑った。
「閣下はなかなか単純で、人に好かれる性格をされてますねぇ」
「あ?誉めるのか貶すのかどっちかにしろよコラ」
「どちらも誉めているのですよ。細かい事が気になり過ぎたことをいつまでも気にとめている面倒な人物と、細かい事は気にしない割り切りの出来る人物、閣下ならどちらに好感をもたれますか?」
「そりゃさばさばしてる方がいいよな」
「私が言っている単純とは、それですよ」
「・・・ならそう言えよな・・・」
フロワードは起き上がり、立ち上がった。クラウに並ぶ程の長身は、美しくとも彼が男だと主張している様な気もした。
「私は嫌な人間ですので」
「・・・最悪だな」
「それが私の役割ですよ」
クラウには理解できない言葉と笑みを残して、フロワードは扉の向こうへと消えた。
作品名:クラウとフロワード 作家名:ハクヨウ