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愛してたぜ―――

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久しぶりに、お前に会った。



「久しぶり」


「ああ、久しぶりだな。」



俺から口を開いて、
お前は素っ気なく返答して。




素っ気なくても、返事はしてくれるんだな。



俺はお前を置いてきたんだ。


左目を失い、傷ついたお前を――


自惚れではない。
お前には、俺が必要だったはず。
俺が側にいて支えてやらなければ、
ならなかったはず。




それなのに、
俺は―――







怖くなって、逃げ出したんだ。


そんな俺に、再会してお前は何を想うのか。


恨んでるか?



それとも…


俺を殺したって、いいんだぜ?




すると高杉の口から、


「愛してたぜ。」




愛してた…?



過去形、な…


そりゃ、そうだよなぁ。




俺は、お前から逃げ出したんだ。



じゃあ、今は?


どう思っているんだ?



聞こうとして、やめた。




恨んでいると言われたら、悲しいから。




俺は…



まだ高杉が好きだ。


好きで好きで、



お前を置いて来ちまったことを後悔しなかった日はないぐらいに。



今だって、お前に抱きつきたい。


その妖艶な唇に吸い付きたい。



その、女物の着物をはだけ、露わになっている胸板に抱かれたい。




でも、それはもう、虚しい願いで。




きっと、
今はどう思っているかなんて聞いても、
返ってくるのは俺が聞きたい言葉ではないだろう。



俺は、ただ


もう一度、やり直したいんだ。



でも、そんな我が儘な事は、到底受け入れられないだろう。




「冷えるな…」



そう。
真冬の深夜、不意に目が覚めた俺は自販機にコーヒーを買いに来た。


そこで、お前に会った。



「さすがに、真冬だかんな。」



俺は、精一杯明るく返した。



もう叶わない願いを胸に抱き、
零れそうになる涙を堪えて。



「寒いか?」



そう言って、俺に自分が羽織っていた厚手の布を掛けてくれる。



「優しいとこ、変わってないんだな。」




お前は、昔と同じ、優しいままで。



あれから、何人の奴と関係をもっていたとしても、俺はお前だけを愛していた。



誰とも関係をもたなかったし、
お前とはもう会えないと思ってたから、
お前との思い出、お前の温もりを大切にしたかったんだ。



「そんなこと、ねぇよ。お前は、何か変わったか?」




「なんにも、変わってねぇよ。あの時から、ずっと。」



少し、意味深に聞こえるかな、と思ったが、
俺は今も昔もお前だけ…



そういう意味を込めて言った言葉。


お前は深い意味には捉えないだろう。



なのに。


そう思っていたのに。



「…気持ちも?」




言われて、少し焦る。



こいつは、今は俺の事をなんとも想ってないだろう。


なのに、なぜ俺の気持ちを気にする?



でも、嘘は吐きたくない。



だから、




「ああ。何にも変わってねぇっつったろ。」



お前が、きもち微笑んだ気がした。



お前と別れて、もう幾年も経ったというのに、
まだ気持ちを捨てられない俺を、笑っているのか?



それでも、いい。
今、この時お前に会えた事が、嬉しいから。


でも、お前の口から出た言葉は



「俺たち…やり直せねぇか…?」


やり…直す?



だって、お前は俺を、
【愛していた】と言うんだろう?


今は、何にも思っちゃいねぇんだろう?



「な、んで?今は、愛してないんだろう?」



言葉が、出た。



ずっと、問うてみたかったこと。



――今は、どう思っている?――




「俺は、ずっとお前を愛してたんだ。
お前が俺のもとから離れていっても、ずっと。
俺はお前が離れていった事なんざ、怒ってねぇ。
だから、銀時…」



高杉が言い終わる前に、抱きついた。



だって、もう耐えられなかったから。




―――愛してたぜ―――




その意味は



昔から今まで【愛してた】って事だったんだな。



それは今も現在進行形で。




俺とお前は、もう一度やり直せるんだな。



「俺は、お前を置いて行ったんだぜ?
なのに…また、やり直そうって、言ってくれんのか?
それは…」




途中で、言葉が出なくなった。


後から後から涙が零れてきて、
そんな俺に、お前はまたやり直そうって言ってくれるのか?




それを見たお前が、俺を側に抱き寄せて。
俺の瞳から止め処なく溢れる涙を拭い、
その妖艶な唇を俺のソレに落としてくれて。



あぁ、何年ぶりだろう。

お前の口付けは、昔と同じ優しいまま。



「それは…
これから、お前とずっと一緒に居られるって事か?」





高杉は無言でまた俺を抱き寄せた。



そして


愛してたぜ、銀時。
昔から今まで。
そして、これからも、愛してるぜ。




俺も。
ずっとお前を愛していた。
そして、これからもずっと、愛してる。



作品名:愛してたぜ――― 作家名:楓ちん