君を守護する者
そして、君を守るから。
ゆりが「影」を倒してから、三日が経った。
この三日の間に、音無が中心となってSSSのメンバーを次々と「成仏」させていった。
みんな、安らかな顔で来世に希望を持って、消えていった。
残ったのは、音無、かなで、日向、直井、未だに眠りから覚めないゆり。
そして。
ゆりが寝ている保健室の扉を開けたのは、最後まで消えることを迷っていた野田だった。目を覚まさないゆりのベッドの傍に、腰かける。愛しい人の、美しい寝顔を見て、野田はほおと息をついた。すうすうと規則的な寝息が聞こえた。
生きている。ゆりは、まだ。
まだ野田が消えることを選べないでいるのは、ゆりが目を覚ましていないからだった。そして、彼女に、自分の思いを伝えていないからだった。音無は笑って言った。お前の好きなようにすればいい。俺たちは急がない。そのうち、ゆりも目覚めるだろう、と。野田は、迷っていた。最後に、もう一度。もう一度だけ。彼女の顔が見たかった。
おそるおそる、触れた指は、温かかった。
「・・・ゆりっぺ。みんな、行ったよ。高松も、椎名も、藤巻も、TKも、松下五段も、大山も、竹山も。」
触れた指を、ぎゅっと握りしめた。ぽたりぽたりと、涙が零れる。
「最後の、お別れ、言いに来たんだ。・・・ゆりっぺ。ありがとう。俺達、ゆりっぺがいなかったから、こんなに楽しい生活できなかった。本当に、感謝してる。」
野田の瞳から零れた涙は、寝ているゆりの頬に落ちた。ぐっと唇を噛む。
「ずっと、・・・ずっと、好きだった。好きだよ、ゆりっぺ。俺は、何度生まれ変わっても、たとえ来世がミジンコでもフジツボでも、それでも、絶対に、また君を守るよ。」
ぐしっと涙を拭った。もう、未練はなかった。辛かった。苦しかった。でも、それ以上に、毎日が、楽しかった。好きな人を守れた。それだけでよかった。
「もう、行くな。・・・ありがとう、ゆりっぺ。」
さよなら、と呟いた言葉は、もう聞こえなかった。ハルバードが、ガシャンと、床に叩きつけられた。
「・・・・・ばか」
ゆりの頬には涙が零れていた。さっきまで触れていた指は、まだ温かかった。
来世で、待ってて。
さよなら。じゃあ、またね。