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頬の上ならば 厚意のキス

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まきまき、と包帯が自分の身体に纏わりついてくる。解ける程に緩くはなく、けれど皮膚を圧迫する程までには強くない絶妙な締め付け具合であった。それを施してくれた男は几帳面そうに布の端を切れば、目立たないように結び目を平たく作ってくれた。
 相変わらず器用な男だ、と関心していれば、三成は目元を和らげて不快じゃないか問うてくる。
「別に不快なところなど、なかろ。矢張りぬしは器用な男よ」
「ただ私は刑部に言われた通りにしただけだ」
 三成は余った布地を綺麗に巻き取り、前に巻いていた古い包帯を大まかに折り畳んで蝶々結びにし、捨てる為の準備をしていた。つい先程まで自分の皮膚をべったりと覆っており、触ったら病が感染ってしまうかもしれないのに、片付けまでやってくれるなんて。
「われに、ここまでよくしてくれるのは、ぬし位よ」
「そうか? 私は普通だの思うが」
 不思議そうに首を傾げられてしまったので誤魔化すように笑えば、刑部はいい奴ではないか、と納得できないようにぼそぼそと呟いていた。
 そう言えば、この男は他人を盲信的に信じてしまう不器用な奴だったか。つまりは自分は信頼されているのだろうと思うと、心が暖かくなった。
「ぬしがそう思うなら、そうでよかろ。ところで三成、少し目を瞑っていてくれるか」
「? 刑部の頼みなら受け入れる。しかし、身の危険を感じたら目を開けるからな」
 目が閉じられると、吊り上がった眦は下がり大人しく、優しい表情になった。まるで、彼と自分の主にあたる秀吉様が亡くなる前の表情へ少し逆戻りしたようだ。たった数年前が懐かしく思えるなんて、自分も年をとったものと思いつつも、数年前の取り敢えず平和だった豊臣軍がが恋しいからこその思考なのだろうと、自分の中で完結させる。
「いつまで瞑っていさせるのか、刑部?」
「あぁ、もう少し待つがよかろ」
 待てないと目を開けかけた彼を制すれば、どうして自分が目を瞑らされているかわからないようであった。もちろん自分がなにも言っていないからだろう。
 彼の冷たい白さを持った肌に口を寄せる。まろみも赤みも帯びていない頬へ、ちゅ、と接吻を落とした。そすれば、真面目な三成らしく驚いたように目を開き、視界の半分程を陣取ってる自分を見て、口をぱくぱくと開いたり閉じたりして状況が理解していないようである。ただ、ただ、薄い紫色をした瞳に自分が映っていた。
「っ!」
 頬を押さえながら、こちらを見てくるものだから、接吻を施しただけだ、なんて事は言えなかった。なんて、予想以上のオーバーリアクションをしてくれるものであろうか。
「あぁ、ついその。まぁ、気にしなくてよかろ」
 誤魔化すように取り繕ってやれば、疑うような眼差しをしてきた。
「では一体、私になにをしたのだ。変な事ではあるまいな」
 理解していなかった。だから、ここまでもあたふためいていたのか、と呆れながら溜息をつけば、ふいと首を振られて目線を切られてしまった。
 手に持ったままの包帯を弄び始めたかと思えば、彼はおもむろに刀を鞘から取り出して、こちらへと見せつけてきた。
「言わないと、この包帯をずたずたにしてやる」
「……われが全て悪いから、刀を仕舞うがよかろ」
 身体中を包帯で覆ってる身としては、包帯の代えがあるかどうかは死活問題他ならないのである。ある種、背に腹は変えられない状況になってしまって、不承不承ながら頷くに以外なかった。ふん、と鼻を鳴らしてから刀を定位置に戻した三成は、改めてこちらを向いて座り直して吊った目をこちらに真っ直ぐと向けていた。
「で、私になにをしたのか」
「ただ、戯れただけであろ」
 申し訳なくなった視線をずらせば追うように目の前の男も顔を動かしてきた。言うまでは許さない、という事なのだろうか。
「……具体的に言ってみろ」
「ならば、もう一度やってみせればよいか?」
 不遜に彼が言うものだから思わず嗜虐心が鎌首をもたげてきて、細い肩に腕を回して顔と顔を近付けてから頬にキスを落とした。陶器のようにすべすべの肌を唇の上に感じる。
「……ぎょ、刑部」
「われは、ぬしに言われた事をしただけであろ」
 ふ、と笑ってやれば三成は顔を真っ赤にして、こちらの肩をデタラメに叩いてきた。目尻にはうっすらと涙さえ溜まっている。
「は、はは、恥ずかしい事をするな!」
「あぁ、すまぬ。別にぬしを恥ずかしくさせる為だけに、やったのでなかろ」
 髪を掻き乱すように撫でてやれば、顔を隠すように自分の胸に顔を埋めてきた。そして、相変わらず三成の手は肩を叩いてくる。
「だって、目を瞑った三成が可愛いのがいけないのであろう」
「私が可愛いなど、どの口が言っておる」
「だから、われが。知っておるか、三成。今の行為は厚意を意味するのだ」
 そう言えば手をぴたりと止めてくれた。
「それならば早く言えばいいのに」
 彼は今の体制から上に伸び上がるようにして、われの包帯まみれの頬に唇を落としていた。