二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
森永 マミィ
森永 マミィ
novelistID. 10853
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

untitled

INDEX|1ページ/1ページ|

 
Untitled


「おぼっちゃま、何かうれしいことでもありましたか?」

合宿から帰宅したジーノに執事が訊ねた。

「わかるかい?セバスチャン」
ジーノはにこり、笑んだ。

「そりゃあわかりますよ。長年、おぼっちゃまを見てきたのですから。
今年からETUはまた新しい監督になったと聞きましたが、それが理由でしょうか?」

「さっすが、セバスチャン!」
指をパチンと打ち鳴らし言う。
「そうなんだ。タッツミーって言うんだけどね…」

…執事は、久しぶりにジーノが心から嬉しそうな顔をするのを見て、ホッと胸を撫でおろした。

ジーノはワガママだ、気まぐれだ、と色々周囲から言われていたりするが、本当はとてもナイーヴだし繊細なことを長年見守ってきた執事であるセバスチャンが一番わかっていた。…たしかに気まぐれでワガママである部分もあるにはあるが。

「…今年は楽しいシーズンになりそうですね」
「あぁ!そうだね、セバスチャン」
言って紅茶をすする。
「この紅茶、うまいよ。セバスチャンはさすが僕の執事だけのことはあるね!」
「当たり前じゃないですか」
執事はあまりにジーノが上機嫌なので
いつも表情を崩さないのに
つい頬を緩ませて笑んだのだった。


 + + +

――― どうせ、監督が変わったってまた、同じさ。
ジーノは携帯電話からの連絡を切ると
ベッドサイドに座り
独りごちて珈琲をすすった。

「どうしたの?ジーノ」
「あ、いや。なんでもないよ」
昨日バーで出会ったばかりの女が
隣で眠たそうな目をこすりこすり
裸体を横たえたまま
ジーノに向って訊いた。

ジーノは女を一瞥し
ふと諦めたような笑みを浮かべて言った。
「―― 実は昨日からみたいだったんだ、キャンプ」
言うと、女は目を思い切り見開いて
「えぇッ!それなら早く行かなきゃいけないじゃない!」と大声を上げた。

………女はなんで、こう、ヒステリックな程の大声を出すのだろう。
女は嫌いじゃない。むしろ好きだと思う。
抱きしめると柔らかいし、甘い香りがするし、温かい。

――― けれど。
どんなに 一時的には ぬくもりを得たとしても
終わってしまうと 
また心の中にひゅるり、と風が吹き抜ける。
その寂寥を埋められる存在とは
未だかつて出逢ったことのない
ジーノだった。
出逢ったことがないからこそ……。
言い訳かもしれないが
またぬくもりを求めて
ふらり、ふらりと彷徨うのかもしれない。

「…そうだね。やっぱり行かないとマズイよね」
苦笑して言うと
「あったりまえじゃない!」
しょうがないものを見るような目つきで女が言う。

………そう言えば、この女性、なんて名前だったっけ…。
今更ながら名前すら覚えてないことに気付いたジーノだった。

女から急かされながら
ようよう出る準備をすませ、ホテルをチェックアウトした。

今年のキャンプは沖縄ではなくて
よりによって、なんと、東京…。
…なんでまた、そんな寒いところで。
ホームグラウンドでキャンプなんて前代未聞だ。
体を充分に温めて細心の注意を払わなければ
大事な体を痛めてしまうことになりかねない。

「あーぁ。いっそ今年のキャンプ、さぼっちゃおっかなぁ…」
そう思わず呟いたら、ふと、先ほど東京から電話してきた
有里の恐ろしい顔が目に浮かんだ。

「………やっぱり、ちゃんと行かなくちゃ、ね…」

苦笑して空港へ向かったのだった。
作品名:untitled 作家名:森永 マミィ