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二人きり約束を

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辺り一面、頭がしんと冷える芳醇な香りを漂わせる花々の絨毯が敷かれていた。立ち上がって見渡すも果てのない景色が広がるばかりで、あと少し時間を置けば此処はひたすらに何も変化のない退屈な場所に感じる予感がした。
なるべく踏み荒らさないように心掛けて歩むと、爪先に何かが行き当たる。辿った先には秀麗な造作をした、しかして異様にも包帯でぐるりと顔を覆ったひとが眠り顔を埋もれさせていた。文字通り意識はない。明るい色の髪は柔らかそうなので指通りが良さげでいて、偽物みたいに長い睫毛が艶を出しながらも瞳を隠して、淡い色の唇は閉じられていて、白皙の頬には赤みがある。
そう気付いたら指の先で柔らかい頬を突いていた。瞼が震え、最初に視界に入り込んだのは僕しかいない。此処には今の処、僕とあなたしかいないようなので。

「初めまして。どうやら僕達はまだ戻れるようですよ」
「俺は川の向こうに居るかもしれないハニー達に興味深々だ。…それに、戻ってどうするんだ?一度は弾かれた処だろ」
予測にすぎないが、普段は気丈な雰囲気を醸し出していそうなひとなのに随分としおらしい。どちらかといえば、この様な処で平常を保っている自分の方が場違いなのだろう。
「数奇ですが縁が出来たみたいですから、僕がよびますよ」
「…お願いする」
数秒の葛藤ののち、小さくぎこちなくも歩み寄りの声が耳朶をくすぐる。
「約束だからな」
余程こういったことに慣れていないのか、呆れを過ぎてしまって、可愛いひとにみえてきた。もしや、実は平常でないのか自分。
「其方こそ忘れないで下さいね、お願いします」
そうなだめる。年上だよねえ、このひと。役割が逆転してはいないだろうか。重く鈍くなってきた思考で思う。


こうして。
此処で一旦、ログアウト。



目覚めて隣の白いカーテン影に昏々と眠っていたのには出来過ぎだが、多分あなたなら手間を省略出来たと喜ぶかもしれない。
第一声には改めましてを混ぜ込みたいと思い描きつつ、カーテンをそっとめくった。またじっくりと観賞するのなら今の内。
作品名:二人きり約束を 作家名:じゃく